トランプ大統領は、まさしく風前の灯火。
レームダックを通り越して、ご臨終になってしまった。
全てはワシントンDCの広場から国会議事堂へ向かった、トランプ支持デモ隊の暴挙に尽きる。
1812年米英戦争時代に、イギリス軍が侵入されて以来の出来事で、アメリカ人の犯行としては初めての狼藉らしい。
アメリカ民主主義の象徴としてアメリカ人が誇りに思ってきた議事堂に、暴徒と化した集団が押し入り、部屋を荒らしまわった。
しかもその挙句、議事堂内で死者まで発生している。
さすがにショックな事件なので、当然ながら徹底して原因が究明され、暴徒たちへの処罰が待ち受けている。
警察や司法の問題はそれで片付くが、政治面の責任追及は別だ。
事と次第ではトランプが、この暴動の責任を追及される恐れがある。
事件の発端が、トランプの扇動ではとの指摘が出ているからだ。
この集会は、トランプが「See you in 6th. Jan. at Washington DC」と呼びかけ、支持者が全国から集まったものだ。
集会でトランプが「Walk down the Pennsylvania Avenue.」 と演説し、国会に圧力を加えるために、デモ隊が行進し始めた。
そに後に議事堂に到着したデモ隊が、警官の制止を振り切り、議事堂内に乱入したことは、録画にはっきりと残っている事実だ。
このようなデモの場合、主催者に全ての責任が帰属する。
だからトランプと主催者は、暴徒の議事堂乱入の責任は免れない。
当然トランプと敵対していた民主党側が、トランプ演説が騒動の発端と問題視し、トランプ解任や弾劾を要求するのは政治の常道だ。
トランプはそんな演説をして、危ない橋を渡るべきではなかった。
しかし1月6日に大統領選選挙人が確定してしまえば、トランプにとって、それ以降の抵抗手段がなくなってしまう。
トランプには6日がラストチャンスなので、支持者を煽り、選挙人確定を邪魔して、反撃の時間を稼ぐ算段だったのだろう。
トランプは負けを認めるべきとの声は、共和党内でさえ出ていた。
「最後はペンスがトランプを支持して、選挙人名簿の受け取りを拒否するはず」などは、絵に描いた餅以下の妄想でしかなかった。
ここまで追い込まれていたトランプに、挽回の余地はなかった。
トランプ支持者たちも、議事堂乱入の行為そのものは否定し、乱入したのはトランプ支持者になりすましたANTIFAと主張している。
これは「あんな悪行をやるのはANTIFAだ」との世論誘導なのだが、これが事実かどうかは、今後の捜査で明らかになるはずだ。
ただ当日の映像で、著名なトランプ支持者の存在が確認されている。
死亡者も熱心なトランプ支持者だったのだから、ANTIFAのなりすまし説には無理がある。
支持者の議事堂乱入は、政治家、トランプにとって、決定的な致命傷になってしまった。
トランプが、Twitter アカウントを永久停止されたのもこの暴動が原因で、再度の暴動を扇動する恐れがあると見做されたのが理由てされた。
しかしこの期に及んでも、全くアメリカの本筋に無関係な日本人の中には、「20日就任式までは、何が起きるか分からない」などと、トランプの反撃に期待する連中がいる。
「大統領のトランプが、最後に戒厳令を発すれば事態が変わる」などの妄言を吐く輩までいる。
贔屓の引き倒しとはこのことだ。
次の大統領が既に正式に確定し、任期残りが10日しかない大統領命令を聞く軍隊があるとでも思っているのだろうか。
共和党すら掌握できないトランプには、何一つ武器が残っていない。
形の上では20日までは大統領だが、何かをやろうとしても誰からの協力も得られない状況なのだ。
トランプは大統領在任中、様々な実績、功績を挙げた。
何よりもアメリカ景気を回復させ「Make America Great Agaim.」の公約 を実践、実現した。
中国共産党の危険性を訴えることで、膨張する中国にたいする包囲網も作り上げた。
北朝鮮による日本人拉致問題も、トランプが初めて国際舞台で取り上げ、北朝鮮を非難した。
武漢肺炎さえなければ、悠々閑々で再選を果たしただろう。
それだけに、多くのレガシーを棒に振り、歴史に汚点を残したトランプ政権末期の愚行が残念だ。
民主主義は、必ずしも思うような結果が出ないことがある。
今回のアメリカ大統領選こそその典型で、思いもよらなかった武漢肺炎の逆風で、トランプは「一歩前進二歩後退」を余儀なくされた。
しかしそれでも敢えて「返す返すもトランプは、大統領選の負け方が悪かった」と言いたい。
トランプが、負けを認めたくなかったのは分かる気がする。
しかし、最優秀、最有能と期待した三人の弁護士を以てしても、不正選挙の具体的証拠が見つからなかった。
司法の場で却下されても尚、トランプが権力の座にしがみつこうと画策したのは、民主主義を否定することになってしまう。
トランプ自体は7日の敗北宣言で「全ての暴力に反対」と表明した。
しかし実際のところは、6日時点のトランプは、戒厳令かそれに近い状況を作り出そうとしたとの見方も出ている。
自分の大統領職を守るために、一瞬でもそんなことを考えがよぎったのなら、民主主義国アメリカの大統領としては失格だ。
今回の議事堂乱入事件は、政治家トランプの息の根を止めた。
トランプが四年後、共和党候補として大統領選に出馬する可能性はほぼゼロになった。
この四年間、ずっとトランプファンだったので、そのことが悔やまれてならない。