昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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面食い嫁と面食わず知人の差

仕事をリタイアする時、後輩連中が送別会を催してくれた。

その時の幹事たちは、僕に内緒で密かに我が嫁を訪ねて、会社の誰も知らない僕の日常生活や、結婚の馴れ初めについて聞き出し、サプライズ企画で参加者に公表した。 

そこで、二人の結婚の切っ掛けを質問された嫁の答えは「この人と結婚したら面白いと思った」だったらしい。

 

しかし僕は、この答えが嫁のテレ隠しのウソなのを知っている。

彼女を結婚に駆り立てた真の理由は「単なる面食い」だったからだ。

間違いなく、そのはずなのだ。

ところが、我々の結婚生活は、間もなく50年の金婚式を迎えるほど長く付き合ってきたが、嫁は頑としてそのことを認めない。

だが世間の思いはそのはずだし、何より僕本人がそう確信している。

これほど確かな証拠はない。

 

我が嫁は面食いのはずだが、それとは真逆の「面食わず」が人生哲学としか思えない嫁の知人がいる。

何せ、中学、高校生の頃から、彼女のボーイフレンドと言えば、妙チキリンな顔の奴ばかり。

「ブサイクなオトコだけ命」と、狙い定めているとしか思えない。

 

尤も彼女もこの嗜好には「ハンサムなオトコは努力しない」との、彼女なりの理屈と信念があるらしい。

彼女は年頃になって以降も、この人生哲学を墨守し、どう見てもハンサムからは程遠いオトコと付き合い続けた。

そして彼女なりに様々な紆余曲折を経た上で、最終的に伴侶として選んだ相手は、プロレスラーのキラー・カーンに似たオトコだった。

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こんな感じのご亭主

結婚後の二人は、学習塾を始めた。

そこでキラー・カーン君は、彼女の見立て通りの努力と才覚ぶりを発揮し、地元では名の通った有名塾に育て上げた。

ところが努力家のキラー・カーン君は、いつまでも単なる塾経営者では物足りなくってしまった。

そこで塾経営権は他人に譲り、有名自民党議員の秘書に転身し、政治家の道を志した。

そしてここでも努力家ぶりを発揮し、時の自民党超々大物議員に気に入られることになった。

そこでその超々大物議員から打診されたのが、キラー・カーン君の出身地からの国会議員立候補だ。

そこは長らく、自民党大物議員の地盤だったが、その議員が引退することになったからだ。

大物議員だけに、自民党の後援会は整備されている。

キラー・カーン君は、次に選挙さえあれば、国会議員間違いなしの地位まで辿り着いた。

ここまでの経緯だけでも、徒手空拳で事業を起こし、議員様直前に至ったキラー・カーン君は、只者ではないことが分かる。

ブオトコ狙いに徹した「面食わず」彼女の慧眼たるや恐るべし!

 

ところが、好事魔多し。

なんとこの直後、日本中を騒がせた大型疑獄事件が明らかになった。

マスコミが連日、与党大物議員を追及した結果、キラー・カーン君の後ろ盾のはずだった自民党の超々大物議員が失脚してしまった。

キラー・カーン君の出馬も見送りになり、他の有力者の支援を受けた候補者に差し換えられた。

ほぼ手中にしていた国会議員の地位が零れ落ちたのだから、本人は落胆ぶりは気の毒なほどだった。

 

だがその後キラー・カーン君は、またも努力の人の本領を発揮する。

国会議員には成り損なったが、独学で某外国語を学び、間もなくベラベラ会話できるレベルになった。

その後は、某国で学術論文が認められ大学教師に迎えられ、田舎大学ではあるが教鞭をとっている。

 

本人は立ち直ったようだが、国会議員夫人を夢見ていた「面食わず」彼女の失意も半端ではない。

キラー・カーン君が愛人騒ぎを起こしても「その程度はオトコの甲斐性」と、歯牙にもかけなかった。

自転車にも乗れないほどの運動音痴だったが、キラー・カーン君の選挙活動応援の島巡りのために、舟の操縦資格まで取った。

到底上手くなる見込みもないのに、ゴルフの練習まで通った。

全てキラー・カーン君が国会議員になった時、内助の功を発揮するための努力だった。

その全てが台無しになってしまった。

教授夫人だって大したモノのはずだが、彼女にすれば、国会議員夫人とは比べようもない。

「もはやこれまで」と、別居したまま、現在に至っている。

 

「面食い」だった我が嫁の結婚生活は、大したドラマ的盛り上がりもなかったが平穏だった。

「面食わず」だった知人は、波乱万丈の面白さはあったかもしれないが、夢は実現できなかった。

やはり選んだオトコの顔が、勝負の分かれ目だった。

ただ残念なことに、嫁は「面食い」を頑なに全面否定するし、僕の周囲からも「苦笑しながら消極的な同意」しかない。

僕以外の全員が、真実に目を背ける。

それが不満だ。