やった、やった!
松山英樹がマスターズを制覇した。
日本人初、アジア人としても、初めての大快挙だ。
早朝からテレビにくぎ付けだったが、最終18番を松山がボギーでホールアウトした瞬間、思わず立ち上がって拍手したほどだ。
思い起こせば鈴木則夫が、1976年全英オープンで一時トップに立った時が、日本人ゴルフファンの夢の始まりだった。
この時の鈴木は、最終的には10位で終わったが、日本人が世界に通用するかもしれないと思わしめるエポックメーキングだった。
1980年青木功は、全米オープンでジャック・ニクラスと四日間の死闘を繰り返し、単独二位に食い込んだ。
日本人でもいずれは、メジャーに勝つかもしれない。
日本人トップ選手がメジャーに挑む度に、そう思ったが、結果は良くて4位止まり。
制覇には遠く及ばないまま、鈴木の活躍から45年、青木が世界に肉薄してから40年以上が経過した。
その間に、テニスで大坂なおみが全米や全豪で勝ったが、これはハイチのDNAの後押し効果が大きかったはずだ。
女性ゴルファーは通用するが、やはり日本人オトコの身体能力では、ゴリラやライオンがウェアを着てプレイしているような、外国人ゴルファーには太刀打ちできないのではと、すっかり弱気になっていた。
現に松山は、PGAで五勝していたが、この三年間は勝利から見放されていた。
優勝どころか、トップ10にすらなかなか入れない。
初日、二日目までは良くても、決勝リーグになるとスルスルと後退するのが常だった。
正直に告白するが、僕は「松山は終わった」と考えていた。
だから今回のマスターズで、初日に二位タイでも期待感は全く盛り上がらない。
案の定二日目は少々後退で、もはやこれまでと思っていた三日目、松山が大爆発して二位に4打差をつけて単独トップに立った。
これほどの差がつけば、当然ながら逃げ切り優勝も夢ではない。
と言うことで最終日は、斎戒沐浴の意味で、就寝前に入念に風呂に漬かり、白装束の代わりに着慣れたパジャマで、翌朝のテレビ観戦のために早めに眠りについた。
最終日、一時期二位に5打差をつけた時点で、楽勝ムードで気が緩んだ。
ところがインに入ると、ショットも乱れ、絶好調だったパターが決まらない。
ドンドン差が縮まり、18番では二打差。
そこでの二打目はPWなのに、グリーン横のバンカーへ打ち込む。
我々ド素人ならホームランやザックリが不安だが、さすがに松山は1メートルにナイスバンカーを決める。
2パットでも勝ちなので、ここで優勝を確信したが、松山はこのパターも外した。
少々締まりのない勝ち方たったが、それでも勝ちは勝ち。
世界中が、日本人の偉業を認識した瞬間だった。
もう一つ、今回のマスターズで大感激したシーンがある。
松山のマスターズ制覇も凄いことだが、考え方次第ではむしろこちらの場面こそ、日本中の人に知って欲しい。
テレビではホールアウトした松山と、グータッチで祝福するゴルファー仲間や、拍手を送るギャラリーを映していた。
その後は、公式優勝インタビュー、グリーンジャケットの贈呈式、続いて日本のテレビ局(TBS)が、日本人向けに松山にインタビューした。
ここでは、10年前の大震災直後にマスターズに初挑戦した松山が、地元への感謝を表すなど、些かクサい演出が目立った。
しかしそんな、謂わばありきたりの優勝祝賀の前に、松山がホールアウトした18番ホールのピンを差し戻す時、松山のキャディーの早藤翔太君は、オーガスタナショナルのコースに向かって、帽子を取って一礼していた。
その光景をESPN放送局がしっかりとらえて、世界中に配信したのだ。
Following Hideki Matsuyama's Masters win, his caddie, Shota Hayafuji, bowed to the course after returning the pin on the 18th hole. #themasters pic.twitter.com/gdLsWSC0Ac
— ESPN (@espn) 2021年4月11日
早藤君は、誰かを意識してそんな行動をとったのではない。
コロナ禍でも四日間コースの整備してくれた関係者や、戦いの場となったコースそのものに誠実に感謝の態度をとっただけだ。
しかしこれこそ、Thisi is THE Japanese,
常に森羅万象、周囲への感謝の思いを忘れない、日本人なら当たり前だが、世界中探しても日本人にしかしかできない行動だ。
一方、同じアジア人だが韓国出身のキム・シウは、パターに八つ当たりして壊してしまうシーンが、バッチリと映し出されてしまった。
残りホールはスプーンをパター代わりに使用してホールアウトしたが、マスターズの大舞台での暴挙だけに、アメリカでも大ブーイングの嵐になった。
これもまたThis is THE Korean,
いくらゴルフの成績が良くても、世界中が注目するマスターズでこんなマナーを見せれば、ゴルファーとして尊敬されることはない。
So after snapping his putter on hole No. 15, Si Woo Kim is finishing Round 2 by putting with a 3 wood. He's just three strokes behind the lead. #theMasters pic.twitter.com/HiymRMRHek
— Busted Coverage (@bustedcoverage) 2021年4月9日
道具に当たり散らして壊してしまった韓国ゴルファーと、コースに一礼して去った日本人キャディー。
松山の優勝が嬉しいのと同様に、日本人としてこの差は誇りに思ってよい。
日本人にとって、2021年マスターズは忘れられない。
そして、ありがとう松山英樹、ありがとう早藤翔太!