昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

タイにやって来ました

久しぶりに海外に出かけた。

思い起こせばヨーロッパ旅行を計画していた時期がある。

しかし当時、武漢肺炎即ちコロナが猖獗を極めたために、彼の地域中の飛行機が次々と休便になった。

更に万一発病した場合、日本への再入国も足止めになると脅され、泣きの涙で断念したのが四年前だった。

 

我が家の場合、僕の方は海外に出かけなくても大した痛痒はない。

しかし本質的にデベソの妻は、この四年間で蟄居生活を強いられ相当にストレスを抱え込んでいたようだ。

来年に迫った我々の金婚式を前に、何が何でも予行演習をすると言い出した。

そんな彼女が選んだ目的地はタイ。

大好きなタイ料理を腹いっぱいに食べたいらしい。

 

タイ料理が好きなことに関しては、僕も決して人後に落ちない。

「それでは」とあっさり意見が一致したが、その時に僕の方が出した条件はただ一つ、海外を旅した時の妻の口癖「折角ここまで来たから」はタブーにすることだけ。

貧乏性なのか、妻は旅先であっちこっちに行きたがる。

しかし名実共にアランドロンの再来とも言われてきた僕は、旅先で欧州人のように何もしないことを好む。

本来なら日本でゆっくりしていたいのに妻のストレス発散に付き合うのだから、僕の言い分も聞いてほしいとの要求なのだが、意外にも妻は簡単にこれを受け入れた。

という訳で四泊五日、ひたすらタイ料理を食べ尽くそうとなった次第だ。

 

しかしこの四年間のブランクで、世間は大いに様変わりしている。

先ず四年前は大半の国際線が成田空港離発着だったのに、今や羽田空港が主力になり我々も羽田からの出発となった。

次に搭乗券が電子化され、紙で手続きすることがない。

慣れない羽田空港では土地勘がない上に、うまく作動しないスマホを掲げてのチェックイン手続きに随分と梃子摺ってしまった。

そして何と言っても四年前との一番の違いは、我々の利用する座席がビジネスからエコノミーに変わったことだ。

稼ぎがないのでやむを得ないが、海外に出かける時はビジネスクラスが当たり前だった身分には、かなりの落ちぶれ感と哀愁が漂う。

 

飛行機のクラスの差は、李氏朝鮮時代の身分制度に似ている。

李氏朝鮮では身分によって徹底的に差別されてきた。

両班は高貴な身分とされ、その下の良民や賎民たちは「卑しい身分」と蔑まれ、また自分たちもそう自認していた。

飛行機ではビジネスクラス両班で、ファーストクラスに至っても王侯貴族だ。

そしてエコノミーは賎民扱い。

食事も飲み物や機内でのサービスも、物凄い差がつけられている。

差別には火病的に反対する連中にはもってこいの抗議材料のはずなのに、当たり前だが文句を言うような奴はいない。

支払っている料金の差が歴然なので、如何ともし難いのである。

朝鮮の身分差別は生まれついた時点で決まっているが、飛行機搭乗の格差は努力次第で簡単に解決できる。

金さえ払えば最上級の待遇が約束されるのだ。

そして元両班だったはずなのに、それを維持する金の支払い能力を失った我々夫婦も、賎民としてエコノミーの末席で狭くてリクライニングもできない椅子に座り、身動きすら不自由なほど狭いトイレを使い、全く冴えない機内食に舌鼓を打ちながらの七時間フライトとなった。

 

しかし「存在が意識を決定する」との哲学は正しい。

そのうちにそんな劣等民族扱いが全く苦にもならなくなり、むしろ置かれた我が身の現実を振り返る格好の試練とも思えるようになった。

艱難汝を玉とする。

とは、誠に聞き苦しい言い訳だなァ。

両班を心底憎悪しながらも、両班に憧れ続けた朝鮮人の想いが理解できた気になった。

 

タイ到着は現地時間午後5時頃で、後は大渋滞の中をタクシーを利用してホテルまで。

飛行機では落ちぶれ果てても、平手造酒は男でござる。

せめてホテルは五つ星と、チャオプラヤ川ほとりのシャングリラホテルへ。

最初の晩餐は、ホテル内のタイ料理店サラティップ」。

ここは十五年ほど前の両班時代に、タイに住む友人が案内してくれた高級店だったことを思い出した。
f:id:Sadda_Moon:20231205105150j:image
f:id:Sadda_Moon:20231205105207j:image
f:id:Sadda_Moon:20231205105224j:image


そこではトムヤムクンスープとグリーンカレーを頼んだが、これが絶品。

途中でタイの踊り子四人が、芸を披露しに来るのも十五年前と同じ。
f:id:Sadda_Moon:20231205105239j:image

料理にもショーにも大満足で、飛行機の物悲しい気分を吹っ切れた初日となった。