昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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非常事態下の営業方針

東北・関東大地震と関東地区の計画停電で、当社も直接間接の大きな影響を受け始めた。

実は、我が社の生産拠点は関西地域であり、資材調達先の大半も関西以西が中心だ。
設備は無事だし、当面の生産活動に支障をきたす事もない。
しかし同業者の半分は関東以北にあり、こちらは東北地方では設備そのものが壊れたり、関東では計画停電の為に連続生産が出来ず、生産を見合わせているケースが多いようだ。
その結果、我が社が扱う製品は深刻なモノ不足に陥り、被災地では手当てに苦慮いていると聞く。
生活必需品なので、設備が無傷な当社への引き合いが急増している。

連日、顧客からの電話攻勢が強まってきている。
顧客の要望も切実なだけに、当社の営業も目の色が変わってきた。
どこにどう割り当てて行くのか、緊急会議が開催された。
その場で、僕は下記の四原則を提案した。
  “鏈卉呂らの受注を最優先する。
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  新規取引は見送る。
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被災地優先、新規取引と価格改定見送りは異論がなかったが、同業者への融通は反発が多かった。
反対論は大まかに下記二点。
  ・こんな時期だからこそ、パートナーである我々の顧客からの期待にこたえるべき。
  ・長らく低迷してきた事業立て直し、シェアアップのチャンス。
担当者は、常に角突き合わせている同業者へは生理的反発が強く、こんな大変な時期に「敵に塩」なんてとんでもないと感情的になった。
彼らの気持ちはよく分かる。

しかし僕は、
  ・我々は、自分の生産能力分しか供給できない。
  ・仮にそのシェアが20%とすると、我々は全国の20%の顧客しか満足させられない。
  ・我々が顧客要望をそのまま受け入れると、次々と注文が増えてしまい、すぐに供給能力を超える。
  ・その時点では供給が不可能になり、結局は顧客に不義理せざるを得ない。
  ・受注が増える程、出せば出す程、顧客が喜ぶほど、その時期が早まる。
  ・日本中の生産能力が半減している以上、原則は我々の顧客にも通常の半分の量で我慢して貰うべき。
  ・切羽詰まると、顧客から魅力的な価格提示があるかもしれないが、価格改定は禁止。
  ・千年に一度と言われる非常事態を、ビジネスチャンスととらえてはいけない。
  ・シェアアップは、通常の状況下で正々堂々とやるべきで、こんな時期にやるべきではない。
  ・今回は当社の被害はゼロだが、いつ何時同業者からの支援が必要な事態になるかもしれない。
  ・「乏しきを全体で分かち合う」精神が大事だ。
  ・顧客に一部迷惑をかける事になるが、こんな時期だから、丁寧に説明すれば必ず分かって貰える。
  ・これは「会社の品格」、「個人の品性」の問題だ。
と力説した。

結論は、長期的に供給を継続する為に営業面で当面の販売数量を制限する事と、不承不承ながら同業者への融通を実施する事が決まった。
今回の措置が、収益的にはマイナスになる事も間違いない。
同業者が、当社のこんな思いを受け止めてくれる保証はない。
しかしこの時期に、目ざとくあくどい商売に走ると、天網恢恢、見る人は、必ず見ている。

「自分の良識に従い、良心に恥じない行為をしよう」と締めくくり、会議が終了した。