昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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あの会社のその後

第一次オイルショックの時、ほとんど唯一製品値上げを見送った経営者の事を紹介した。
当然ながら、その会社はオイルショックが終わった後、顧客から称賛され、大いに業績を伸ばした。
社長は、当時の田舎の中小企業にしては珍しく、海外との取引にも乗り出し国際化に備えるなど、事業基盤強化に準備怠りなかった。
そして順風満帆に業績を伸ばしながら後進に道を譲り、第二次オイルショックの数年前に亡くなった。

後を継いだのは、養子に取った娘婿。
銀行マンだった彼は、見栄えハンサムで人柄も抜群だったが、残念ながら経営手腕は先代に遠く及ばなかったようだ。
暫くは先代の遺産で、何とかボロを出さずに会社経営を続けていた彼に、今度はオイルショックよりも性質が悪いバブル経済が襲いかかった。
バブルは、一時的には企業業績を急激に高めたので、凡庸な経営者でも名君と錯覚してしまう。
何せ、誰でも彼でも大儲けする。
そんな馬鹿げた時代が数年続いたので、日本中がすっかり浮かれてしまった。

社長が代わってもその会社は、売上げ増、利益増のウハウハ状態だったので、自信をつけた後継社長は、更に利益を拡大しようと、先代から受け継いだ工場の大増設を決めた。
住宅地に近かった元の工場敷地を売却、郊外に数倍広い土地の確保と、順調に事態が進行していると見られていた。
が、銀行から、「今の土地価格は住宅地用として更にドンドン上がり続けますヨ。売ってしまうのは勿体ないです」と、何ともおいしい話を持ち込まれた。
銀行筋からの「悪魔の囁き」に、後継社長の判断が狂ったらしい。
彼は、ほとんど決まっていた工場敷地売却をキャンセルしてしまった。

ところがその直後にバブル崩壊、彼の会社はダブルローンに苦しむ事になってしまった。
しかも、売り渋った従来の土地価格は暴落の一途。
製品の需要も大幅に縮小してしまったので、新鋭工場の稼働も思うに任せない。
借金が増え、売り上げが伸びないのだから、台所は火の車になる。
何とか立ち直らせようと必死に努力するが、落ち目になると意欲も空回りになる。
一挙に資金繰りに苦しむ事になり、最終的には、先代から受け継いだ工場敷地も本社も新鋭工場も、全て暴落後の価格で売却。
数年後には、お決まりの銀行管理会社へと転落。
あれほど地元で名声を博していた会社なのに、わずか二代で栄光の会社は跡形もなく消えてしまった。

後継社長は、いつまでも「銀行に騙された」と恨み事を言い続けていたらしいが、しかし元はと言えば、欲に目が眩んだ自分の判断ミス。
決して銀行の所為だけではない。
オイルショックに踊らなかった先代社長と、バブルに取りつかれ浮かれてしまった後継社長。
歴史を振り返れば、会社はやはりトップで全てが決まってしまうものだ。