昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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ロンドンでの団体旅行

当方、海外旅行で一番苦手なのは、実は旅行社が企画するツァーに参加する事。
日程が雁字搦めで、次々と名所旧跡巡りを強いられるだけでなく、食べる場所まで決まっている。
便利だが自由が全くないので、いつも追い立てられている感じがするし、嫌いな物まで食べさせられる強迫観念が抜けない。
拠って、基本的には前もってスケジュールを決めず、現地で適当に観光する事にしている。
しかし初めての国で、しかも観光場所が広範囲にわたっている場合は、そうも贅沢は言っていられない。
実はこの日がそうで、心ならずもリーズ城ドーバー海峡カンタベリー大聖堂グリニッジ天文台を巡った後、テムズ川下り(実際は上り)と盛りだくさんのツァーに参加してしまった。

早朝の待ち合わせ場所には、我々夫婦と似たカップルが、三々五々と集まってくる。
日本人は、海外で日本人同士が会う事をテレてしまう面があるようで、お互い挨拶を交わす事もない。
定刻になると、本日のガイドが現れ、出欠を確認、バスへと案内する。
ガイドの説明は、自己紹介、本日の予定、注意事項と進んでいくのだが、最初の自己紹介で、思わず目が点になる。
「本日一日、皆様とご一緒する私、タキガワ・ユミと申します。」
どのような漢字なのかは知らないが、あの天下の大女優と全く同じ名前だ。
しかし同じなのは、名前だけ。
年の頃なら60数歳、姿かたちはスターウォーズヨーダがサングラスをしているのとそっくり。
どう見てもベテラン過ぎのオジョーサンだが、その説明が冗長、冗漫。
ダラダラ長いだけで纏まりがないので、途中で一体何を説明していたのか分からなくなってくる。
しかし先だってのロイヤルウエディングの話になると、全員が注意深く身を乗り出して聞く。
やれ、「この道を馬車が通った」とか、「このホテルにケイトさん一家が前夜宿泊した」とか、まるで具にも着かない話だが、その度にツァー客はカメラを持ち出しパシャパシャ。

最初の目的地リーズ城には、バスで一時間超で到着。
大して有名ではなく、知る人ぞ知る名所らしいが、当方の感想は「わざわざ来るまでもなかった」。
むしろ周囲がゴルフ場で、イギリス人がセルフプレイに興じていた方を注目。
続いて、ドーバー海峡にチョイと立ち寄り、本日の本命、カンタベリー大聖堂へ。
ここは世界遺産にも登録されているので、スケールも壮観だし、見せ場も多い。
特に豪華絢爛たるステントグラスには、敬虔な無宗教徒の当方、思わず見惚れてしまう。
この大聖堂を取り囲む町並みは、日本の門前町と一緒。
お土産物屋や食堂が、ズラリと並んでいる。
世界中どこにでも蔓延っている、かのスターバックスも、ここでは少々瀟洒な建物だった。

続いて目指したのは、グリニッジ天文台
ところがガイド曰く、「最近は入場料を取りますから、横からご覧頂きます」。
と言う事で、門越しに世界標準子午線0度を写真に収めるだけ。
こんな程度で、グリニッジ天文台を訪問した事になるのかと疑問に思ってしまう。
遥か日本から観光に来ているのだから、入場料をケチってもと思うが、ツァー会社にもコスト面の都合があるのだろう。

テムズ川を上る船は、「4月のPunctuality96%」の表彰状が飾ってあった。
しかし、何をどう測定すれば96%になるのかは不明。
ロンドン橋を潜り、周囲の景色を楽しみながらの船旅だが、何せ寒い。
午後6時に最終目的地に到着し、ここでタキガワ・ユミ女史とお別れ……
で、済めばハッピーエンドだったが、彼女の「今日水曜日は、ウェストミンスター寺院は6時半まで」の余計な一言で、最後の最後が悪夢となってしまった。
我が家の山の神が、「それなら行く」と言い出し、急ぎ足でウェストミンスター寺院に駆けつけるも、何と6時で閉門済み。
仕方なく、歩いて近所のはずの宿泊ホテルを目指したが、道に迷っていつまでも辿り着かない。
結局1時間以上も歩き回り、途中道順を尋ねる事4回。
ここでも、当方の流暢なKing’s Englishが、なかなか通じない。
「ピカデリーサーカス駅はどこ?」と、実に平板な発音で尋ねると、ほぼ全員が首をかしげる
地図を片手に「ここ、ここ」と指差すと、「Oh、ピッカッデェリーィサーカス」と、最初のピに強いアクセントの、訛りのキツイ返答が帰ってくる。
イギリスの田舎者と話すと、苦労が多い。
最後の杖を突いた老夫婦はとっても親切で、「OK, come with me.」と道案内を買って出てくれる。
ところが自分達の歩くスピードが余りに遅いので、とうとう「Go ahead.」。
苦心惨憺で、疲れ果ててホテルに戻った。
この日は、朝食も昼食も軽めでも猛烈に腹が減っていたが、余りの疲労困憊振りに食欲も喪失。
風呂に入るや否や、即効で寝てしまった。