昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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仕事の事前準備

仕事がうまくいくかどうかは、準備にかかっている。
そう断言できる。

何度か営業で修羅場に近い状況を経験したが、そのたびに準備の重要さを痛感した。
会社と会社の付き合いは、Win-Win関係が出来ればそれに越した事はないが、一義的には利害の綱引きなので、どうしても勝ち負けがつくケースが発生してしまう。
また、双方が会社を代表して交渉する場合、引くに引けない場面に遭遇する事もある。

僕の場合、重要な面談や交渉の場合、そこで起き得るあらゆる可能性に対して、必ず事前に想定問答集を作った。
長く仕事をしていると、相手の関心のポイントや、お互いの強みや弱点はある程度予想がつく。
相手の要求に応じて、臨機応変に対処する方法もないわけではないだろうが、それでは交渉が決裂したり、あるいは出来もしない約束をさせられたりと、甚だ思わしくない結果になりがちだ。
出たとこ勝負ではなく、最終的には「ここ迄はやむなし」の了解を社内で取った上で、交渉の場に赴く。
そして予め相手の出方を予測し、何段階かの妥協点を想定し、その各々に対応策を考え、文章にまとめておく。
頭の中でまとめていると、前後のつながりが不自然になっているのに気がつかないケースも出てくるので、必ず書き物にして、自分の話す内容に矛盾がないかを確認する。
ここまで準備すれば、大抵の交渉事はこなせる。

それでもたまには、まるで想定外の質問や叱責が飛び出す。
その時には、「それについては分かりませんので、次回お答えします」と、決して苦し紛れの嘘をつかない事を心がけた。
いい加減な答えでその場を凌げても、それが実行出来なかったり、あるいはまるで違った情報だと、後日信用を失くす。
それよりも、正直に「分からない」と答えた方が、結果としては良かったのではと思っている。

僕のある先輩は、まさに「立て板に水」の論客で、どんなに詰問されても必ずある種の答えを言い返す。
しかしその内容は、論理的一貫性など全くない、支離滅裂なものだった。
それでも彼の、持って生まれた憎めない人間性の所為か、顧客も腹も立てなかった。
しかしそんな芸当が出来るのは、まさに一握りの天才タイプでしかない。
普通の人間は、不信感を買ったり、人間性を疑われたら、その後のビジネスに大いに支障をきたす。

顧客が部屋に入ってくる前に、僕は用意していたカンニングペーパーを密かに取り出して、その日のシミュレーションの最終チェックをする。
後輩連中は、最初は何をやっているのか分からなかったらしい。
内容を聞いた後、何人かの後輩は、同じように準備するようになったようだ。