昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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息子の縁談

一番上の姉が電話してきた。

数年前に連れ合いがなくなって以降は、すぐ近所に一人娘はいるものの、一人住まいなので、暇を持て余しているようだ。
退屈しのぎに電話をしてくるケースが多く、その都度長電話に付き合う羽目となる。
当方が飛行機で出張する機会が多いことを常に心配していて、世界中のどこかで飛行機事故が起きると、心配のあまり、必ず「出張なんかしないように」と連絡してくる。
小うるさいことこの上ないが、なにせ日ごろから母親代わりの存在なので、頭が上がらない。
最後は、「ハイハイ、気をつけますから」と、宥めすかして電話を切るが、話し終わるとドッと疲れが出る。

しかし今回の電話は常になく具体的な話で、我が家の長男の縁談話だった。
当方が受け答えをすると、「アァ、そんなの駄目駄目」と木で鼻をくくったように簡単に却下してしまうので、今回は我が嫁を説得にかかったようだ。
なんでも相手の女性は、齢30歳。
東京で働く総合職、美形の上に、性格円満。
「非の打ち所も無い、素晴らしいお相手さん」との触込みだった。

しかし、当方の考えはまるで違う。
第一に、我が長男には、結婚する気がまるで見えない。
周りに女性の影がちらつくと、それなりに色気を感じるものだが、我が愚息に限っては全くオンナっ気がない。
本人が結婚する気がないのに、周りがヤキモキするなんて愚の骨頂。
確かに疾の昔に30歳を超えているので、適齢期は過ぎ去ったのかもしれないが、それでも本人の意思が最優先されるべきで、周囲があれこれ心配する必要はない。
第二に、そもそも相手さんが姉の売込みほど素晴らしい人ならば、その時点で我が愚息とは釣り合いが取れないし、本当にそんな良い人が、これまた30歳まで片付かなかったのも腑に落ちない。
何よりも、結婚生活が上手くいって当たり前、下手をして喧嘩ばかりになれば、紹介した責任を感じてしまう。

当方、長らく会社生活を送ってきたので、それなりに気の利いた女性もたくさん見てきた。
この人だったら理想の家庭が築けるのではと思った人もいるが、それでも一度として結婚の世話をしようと思ったことはない。
会社で見せる姿が、家庭と同じわけではない。
まるで違った環境で育ってきた二人で、同じ屋根の下で生活を共にすると、些細なことでも行き違いが発生する。
では何でもこっちの言うことを聞いてくれて、口答え一つしない人が良いかと言えば、必ずしもそうではないところが、更に事態を難しくする。
それでは歯ごたえがなく、すぐに欲求不満に陥る。

二人の性格さえ良ければ、素敵な結婚生活が保証されるわけでもない。
やはり結婚はギャンブルなのだ。
だから、「このギャンブルだったら例え負けても本望、悔いはない」と、本人が覚悟を固めたケース以外は、他人の結婚に口を挟むのはやめた方が良い。
そんな信念から、折角の姉の親切も、丁重にお断りをすることになった。