今を去ること10年前、ブログにこんな記事を載せていた。
https://sadda-moon.hatenablog.com/entry/61523904
当時の民主党政権下で、円高が80円台に突入し、円高不況が騒がれていた時だ。
円レートは、長らく1$=360円の固定相場だったので、末尾の0をとってゴルフのハンディに見立てたのだが、意外にも、分かりやすいと好評だった。
ゴルフ初心者でハンディ36を貰った若者=日本が、国際トーナメントで勝ちまくったのでドンドンハンディアップされ、とうとうシングル入りした状況と説明したものだ。
それまでは少々厳しいハンディを課されても、日本独特の創意工夫で、国際的ライバルたちと対等以上に戦ってきたが、さすがの日本もシングルハンディの腕前はない。
僕は日本の実力を、「何とかハンディ12にしてくれ!」が本音、即ち円ドルレート120円が望ましいと見ていた。
結果として民主党政権が自滅し、安倍政権のアベノミックス政策で、円レートが110円から120円近辺をウロウロしている間に、日本の景気は大幅に改善された。
当時は、素人のテキトーなホラ話と思われただろうが、結果としては当たった。
と、自画自賛したい気分だ。
僕は常に、日本にとって円レートのアップダウンは、必ず両方にメリット、デメリットがあり、基本的には相殺されると信じてきた。
何故なら、日本は原材料の大半を輸入し、それを加工して輸出しているからだ。
加工段階で付加価値が付くので、入りと出が全く同額ではないが、しかし一番分かりやすい例で言えば、原油は100%輸入していて、これが全産業の出発点となっている。
利は元にあり!が、利益を生み出す根源だ。
全産業のエネルギー源を安く調達できるなら、加工業には絶対にプラスに働くはず。
今、日本からの輸出の中心は自動車産業で、トヨタもホンダも、円高になると必ず収益予想を下方修正する。
が、これらの自動車産業でも、時間差はあるが、円高では必ず調達価格が下がる。
しかし彼らは、悲観的な部分しか発表しないので、そうすると日本全体が、円高でマイナスになるような気になってしまう。
実は、日本が一番困るのは、円高、円安のいずれでも、急激に変化することなのだ。
その場合は、企業は大幅な変化に対応するだけの、時間的余裕がない。
すると収益が大幅に増減し、結果として株主に迷惑をかけてしまう。
不思議なことだが、こんな急激な変化が起きた時には、円高であれ円安であれ、企業の業績は悪化すると発表される。
僕が所属していた会社の営業総元締めの役員は、円高の時に「我が社は1円の円高で毎日7百万円の損が発生する」と説明して歩いた。
ところが円安に動くと、「我が社は1円の円安で毎日4百万円の損となる」と言った。
こんなバカな話はないので、本来なら大ブーイングのはずだが、全員が「成程ナァ」と真面目腐って聞いていた。
当時の円レートへの知識なんてそんなものだったし、それは今でも大差ない。
日本の企業には、外国企業と比べると、基礎体力は如何ともし難いほどの差がある。
アメリカ、中国は、国策的に世界的巨大企業を抱え、勝手にグローバル経済を標榜し、弱肉強食の勝負で諸外国企業をねじ伏せてきた。
そんな中で日本は、全く独自の経済体制を打ち立てている。
日本人の勤勉さと、創意工夫によって、世界のどの国も真似できない、高度な技術を武器に世界を相手に戦っているのだ。
先の円レートとゴルフの関係で言えば、ゴルフクラブにおいては、50年前は、スポルディング、マグレガー、ウィルソンが御三家で、ゴルファーの憧れの的だった。
半世紀たった今では、円は三倍以上に上がってしまっても、外国製クラブはすっかり消えてしまい、日本企業製品の独壇場だ。
外国メーカーは、わずかにキャロウェイと、パターのオデッセイとスコッティー・キャメロンを見かける程度だ。
時間さえ与えられれば、円高になろうと円安になろうと、日本企業はどんな状況にも対応するだけの力がある。
それが我々の先達が、苦労と工夫の上で積み重ねた、日本の伝統的な強さなのだ。
労働者諸君、案ずるなかれ!
円高になろうと、円安だろうと、日本は強いのだ。