人間、どんな境遇に落ちても、そこで何らかの目標を持たないと生活に張りがなくなる。
働いている時は、オートマチックにノルマが課されるので、已むに已まれず目標が設定されてしまう。
それが簡単には達成できないような代物なので、連日不平不満を口にしながらも、悪戦苦闘を重ねる事になる。
しかし仕事から離れると、そんなストレスはなくなるが、一方で目標も、また目標を達成する為の当面の課題も無くなってしまう。
それまでの人生が仕事人間であればあるほど、この切り替えが難しい。
結果としてリタイア後も昔の業務の周辺企業に再就職し、元同僚や職場との関わりを継続するケースが多い。
僕の場合、幸か不幸か、歳も歳だし、完全リタイア生活への憧れもあったので、敢えて再就職活動をしなかった。
ある日突然、やらなければならない目標が消滅してしまったので、その分一日２４時間の使い方を考え、工夫する必要があった。
しかも年金生活者になるので、カネを掛けない方法を編み出さないといけない。
結構難題かと思ったが、それまでの趣味が大いに役立っている。
趣味の盆栽は、かなりの時間を消費できる。
現在所有しているのは７０鉢以上。
我が家の場合、良くもこれだけの鉢数が置けるものと思うほど狭い庭だが、置き場に工夫を凝らして何とか納めている。
尤もこれ以上の置き場はないし、資金面でも新たな盆栽を買い付けるほどの余裕はない。
よって今までに買い込んだ盆栽を、手入れするのが日課になる。
自分の好みに合わせて、大きく改造するのもまた楽しみだ。
超高価なものは、改作に失敗して元も子もなくなると困るが、適当な価格の品物は、大胆に切り込みを入れて、元の姿からは信じられない程変貌を遂げた盆栽に仕立て直している。
１０年、２０年後に、見栄えの良い盆栽を作り上げようとする、息の長い目標だ。
また読書が好きなので、仕事を辞める直前に読みたい本を大量に買い込んだ。
朝１万歩のウォーキングを終え、風呂で汗を流した後の午前中は、根を詰めて１時間以上を読書時間にあてている。
読書を通じて、更に見聞を広めたい。
人間力を磨くのには、定年もなければ、限界もない。
最早ビジネスで使う事はなくなったが、知らない人と友達になる為には、英会話の勉強も欠かせない。
ここでも極力カネを掛けないように心掛けているので、主力の勉強場所はＮＨＫのラジオ英語講座となる。
この４月から、受講講座を更に増やし、合計６番組、一日１時間５分間を録音する。
その日の午後にテキストを見ながら勉強、翌朝のウォーキング中に復習する。
人通りの少ない道を選んで歩いてはいるが、それでもヘッドフォンステレオに聞きながら大声で英語を口遊んでいる様は、傍からは「変なヤツ」に見えているだろう。
英会話上達の為には、「転び神道教徒」の汚名も辞さず、耶蘇教の宣教師とも付き合い始めた。
教会に通い始めて三週間、毎週イエス・キリスト様にお祈りを捧げたりしている。
果たしてこんな鈍人間を、キリスト様は救ってくれるのかな？
それでも、学生時代から不真面目な生活しかしてこなかった不良人間が、「少しでも自己啓発」と目標を立てて努力しているのだから、八百万の神様達は、一時の浮気心を許してくれるに違いない。
アーメン！(???)
