昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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バス事故とSMAPと規制緩和

一時期、小泉純一郎竹中平蔵の主導で、規制緩和こそ競争を誘発し経済を活性化すると信じ込まれた。
如何にも胡散臭い議論だったが、郵政民営化さえすれば、世の中の全ての矛盾が解決できるかのような情報が氾濫した。
その結果、民営化された郵政業務は、それまでの殿様商売が姿を消している。
その典型がゆうちょ銀行だ。
今やオークションの振込口座は、四分の三以上がゆうちょ銀行になっている。
実際に、ゆうちょ銀行は便利だ。
全国津々浦々に店舗があるし、ATMは土曜日、日曜日も手数料なしで稼働している。
振込口座番号を入力すると、口座名が表示されるので誤入金がない。
そんな所為もあってシェアが拡大しているのだろうが、その分、民業圧迫にもなっているはずだ。
しかも民営化とは言っても、ゆうちょ銀行の後ろには、株主としてのお上の権威がちらついている。
ゆうちょ銀行こそ、都市銀行信用組合にとって最大最強のライバルであり、ゆうちょ銀行への対抗上金融機関の整理統合が進まざるを得ないだろう。
 
流通革命を起こしたヤマト宅急便は、規制と戦い、新たなビジネスを作り上げた。
ゴルフやスキーに出かける時に、ゴルフクラブやスキーの板を持って移動する煩わしさはなくなった。
これは全て、ヤマト宅急便のお陰だ。
ヤマト宅急便小倉昌男社長の奮闘ぶりは、高杉良の小説にも克明に描かれている。
ところがこの分野にも、郵政民営化の影響が押し寄せている。
ヤマト宅急便側は、民業圧迫と訴えているが、今や宅急便よりも値段が安いゆうパックが優勢になりつつある。
 
今回軽井沢で発生した格安バスの転落事件も、規制緩和の影響が指摘されている。
バス・トラック業界の規制緩和の結果、需要減にもかかわらず、バス会社が倍増した。
必然的に競争は激化し、価格は下落する。
今回の事故を起こした会社では、様々な違反行為が露見しているが、正直に言えば、そんな規則を守っていたら商売にならないのだろう。
パンフレットには「優秀な運転手、完璧に整備された車両、しかも格安料金」と謳っているだろうが、そんなのは絶対にありえない絵空事だ。
格安料金とは、手抜きの結果であり、利用する場合も、そんな覚悟が必要なのだ。
 
一方、まるで規制緩和が進んでいない業界の存在も判明した。
芸能界だ。
SMAPの独立騒ぎで、芸能レポーターは「SMAPは甘い、簡単に独立なんか許されない」と、異口同音に語った。
これはタレントが事務所の方針に逆らった場合は、活躍の場所を奪われることを認めているものだ。
そして芸能界ではそんな規制こそが正義であり、それが当たり前の常識として通用していることを表している。
 
かっての映画界には五社協定があり、俳優が勝手に他社の映画に出ることはできなかった。
プロ野球でもフリーエージェント制が認められるまでは、選手の生殺与奪の権利は全て球団側にあった。
俳優や野球選手たちは、組合を作り、権利を主張し戦った結果、今では一定の移籍の権利を取得した。
しかしSMAPの四人組が、マネージャーと共に独立を計画した途端、ジャニーズ事務所の逆鱗に触れ、仕事を干されてしまう恐れが出てきた。
テレビタレントを管理している芸能事務所は、何と旧態依然としていることだろう。
尤も所属タレントの引き抜きや移籍が一般化すれば、彼らへの給料は鰻上りになり、番組制作のコストが嵩む。
それは最終的には宣伝広告費として、我々が購入する商品の価格に上乗せされる。
 
このように、規制緩和さえすれば、事態が好転すると思うのは早計だ。
それは、今回のSMAP騒動やバス事故や、食の安全問題を違った視点から観ればよく分かる。
規制緩和すれば、必然的に競争が激化し、価格が下がる。
市民の立場からはありがたい一面があるが、一方では手抜きによるリスクにも晒される。
アメリカ的なグローバリズムが広まる中では、結局のところ、規制緩和のプラスマイナスを理解して、自分で自分を守るしか方法はない。