4月になると、僕には三つの楽しみがある。
一つは花見。
我が家の近所にもいくつか桜街道があり、桜が見事な満開となる。
毎年同じ光景だが、何度見ても、見飽きず日本人に生まれてよかったと思う瞬間だ。
二つ目は桜花賞。
唱和48年、大好きだったキシュウローレルがニットウチドリに完敗した。
気まぐれ牝馬の争いなので、馬券を当てるのは難しい。
今年もまた、見るも無残な惨敗だった。
そして三つめが、ゴルフマスターズのテレビ観戦。
毎年早朝からテレビにくぎ付けになりながら、選手の一挙手一投足を応援している。
仕事の現役時代は、出社時間を気にしながらの観戦で、しかも最終日の一番良い所で時間切れになるのが常だったが、リタイアした後は、初日から最終日まで心置きなく楽しむことが出来る。
今年は最終日、最終組がバックナインに入ってから、デッドヒートを繰り返した。
実は前日の夕方、妻と散歩しながらマスターズ最終日結末の予想を戦わせた。
ジャスティン・ローズ、セルヒオ・ガルシア、リッキー・ファウラー三人の争いまでは意見が一致したが、妻の予想はローズ一押し。
ガルシアもファウラーも、最終日の一番大事な場面でパターが下手だと断言する。
僕は、そろそろ勝ってほしいとの個人的な希望で、密かにガルシア応援に回った。
そして、今日のマスターズ。
ハーフターンまで並んでいたローズとガルシアだが、10番11番でガルシアが連続ボギー。
テレビのアナウンサーまで、「これがメジャー未勝利、ガルシアの限界」みたいなことを言う。
13番のテーショットも大きく曲がり、アンプレアブルで一打罰。
この時点で、ローズが圧倒的に有利になり、ガルシアは敗色濃厚のムードだ。
ところがそのホールで、ガルシアは1パットパーに対して、ローズのイーグル逃しバーディーパットが決まらない。
ガッツポーズをしたガルシアの目の輝きに、「これはまだ勝負は終わっていない」と思った。
いやこの瞬間に、僕は世界でもごく少数派だろうが、ガルシアの逆転勝利を確信した。
(なんてのは、全部結果論)
そこからの全ホールは、両選手ともピンチを凌ぎ、チャンスを生かしながら、結局はプレイオフ。
その最初のホールで、ローズがティーショットを大きく右に曲げた時点で勝負あり。
「神の子」と言われ、いずれは世界を制すると言われ続けたガルシアも、今やどう見ても「神のオジサン」。
すっかり老け込んだ四十面を、クシャクシャにして喜んでいた。
更に言えばガルシアは、以前噂されたマルチナ・ヒンギス同様、結婚が決まっている恋人も美人とは言い難い。
世界的な有名人なのに、女性の趣味が良くないのも好感が持てる。
マジャー挑戦73戦目でマスターズ制覇、しかもその日は偉大な先輩、セベ・バレステロスの誕生日。
本当は今日だけの俄かファンだが、気分だけは長年に亘ってのセルヒオ・ガルシア追っかけ連中と一緒。
現地のパトロンたちと同じ感激に浸った。