この間、酷い咳を多発し、痰が絡む。
夫婦ともに似たような症状なのだが、僕の方はついに居た堪れなくなり、先週金曜日に近所の町医者に出掛けた。
ところがこの医者がとんでもないヤブで、診察も全くいい加減だ。
しかも、三種類貰った薬の一部は痛み止め用だったりなので、効果がまるでない。
ついに昨日月曜日に、病院を変えることにした。
今回は妻も同伴で、夫婦で診察を受けた。
45年近い結婚生活で、こんなことは初めての経験だ。
いきなり医者に、「夫婦で同じ病気なんて、仲が良いですね」と冷やかされて、噴きだした途端に咳が止まらなくなった。
医者もその咳を聞いて、「これはただ事ではない」と、危機感を持ったようだ。
僕への診察では、「ラッセル音がかなりひどい症状なので、抗生物質を投与します」で、妻へは、「ご主人ほどではないが、同じ風邪なので、同じ投薬治療」との見立てだった。
さすがに抗生物質だけあって、一日経過すると夫婦揃って、かなり症状は改善された。
あれほどひどかった咳の回数も、痰が絡む苦しさも減ってきた。
薬の効用に関しては、医者も羨む夫婦仲の良さが表れているが、実は投薬の副作用は全く違う。
妻は、薬を飲むと大半のケースで、眠くなるらしい。
朝から「体がだるい、眠い」とこぼし、そそくさと昼寝に走る。
一方の僕は、どんな薬を飲んでも、眠くなることはない。
尤もこれは薬の影響とは無関係かもしれない。
と言うのは、妻は毎日必ず昼寝をしないと体力が持たないらしい。
しかし僕の方は、無論仕事の現役時代には一瞬の転寝程度はあるかもしれないが、引退後も本格的な昼寝などしたことがない。
そんな僕に対して妻は、「自分の周辺には昼寝をしない人などいなかったし、その体力が羨ましい」と驚く。
妻の家族は、全員昼寝がマストだったらしい。
一方僕の方は、兄弟の誰に聞いても、昼寝などしないと言う。
実は僕は、子供のころから昼寝は大の苦手だった。
小学校の林間学校で、午後の昼寝の時間に他の生徒が眠っている時にも、一人だけ目が覚めていた。
遊ぼうにも、皆寝てしまっていて、誰も相手がいないので、昼寝の時間は大変苦痛だった思い出がある。
要するに昼寝をするか否かは、体力の問題ではなく、単なるDNAの差のようだ。
妻は昼寝をしない僕を羨ましがり、僕は僕で、昼になると眠たくなる妻が羨ましい。
お互いにないものねだりなのだが、僕は今や、ヤルことがないのに時間だけは有り余るほどある。
だから、昼寝せずに起きている時間を、有効に生かす術がないのだ。
それなら、眠る妻の方が絶対に得だ。
こんな些細な処で、妻に負けているなんて、それこそ悔しい。