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カンボジアを巡る国際社会

今回のカンボジア旅行で、三人の現地ガイドを雇った。
基本的には我々夫婦の海外旅行は、ガイドなしで勝手気ままに観光してきた。
しかしカンボジアには多くの遺跡があり、効率的に訪ねるには交通手段が必要だ。
かてて加えて、カンボジアの歴史は、少々本を読んだくらいでは理解できない。
そんな訳で、現地旅行会社で日本語ガイドを雇った次第だ。
 
これは二つの観点から、大正解だった。
一つは、カンボジアの遺跡は他国に比べスケールが大きく、且つ歴史が古い。
このような遺跡を要領よく見回り、歴史的意義を理解するのに、ガイドの存在と説明が大いに役立ったこと。
二つ目は、過去のカンボジアが如何に栄えていたか、そしてそれが近代になって、大国の都合で蹂躙され、結果としてカンボジア国民に塗炭の苦しみを与えたかが理解できたことだ。
 
カンボジア国民は、自国の歴史に大きな誇りを持っている一方、隣国のタイ、ベトナム、とりわけ現在も実質支配されているベトナムへの反感は強烈に強い。
日本では平安時代頃の紀元6世紀、インドシナ半島カンボジアの前身、クメール王朝が支配していた。
御多分に漏れずカンボジアも、隣国との戦争を繰り返し、その都度領土は拡張したり縮小したりしていたが、アンコールワット遺跡のレリーフが、そんな戦争の歴史を詳細に描いている。
しかし近代になって、インドシナを植民地支配したフランスがベトナムに敗れて撤退した時に、現在の国境が決められてしまったのだが、それは元々南ベトナム地域やタイの一部は自分の領土と考えていたカンボジア人にとっては、極めて不満な決定だった。
その後、フランスに替わって南ベトナムに進駐したアメリカと北ベトナムの、いわゆるベトナム戦争では、中立だったはずのカンボジアだが、国土の一部がホーチミンルートだったとの理由で、アメリカ軍による北爆同様の絨毯爆撃を受け、国内の農業に壊滅的被害が出た。
その結果、カンボジア国内は反米ムード一色になり、当時のアメリカ寄りロン・ノル政権に反対するゲリラ行動を繰り返していたポルポト軍への支持が一気に高まった。
ベトナム戦争アメリカが敗北し、カンボジアポルポト政権が誕生した時、カンボジア国民は大快哉を上げたらしい。
しかしそれが、地獄の始まりだった。
中国共産党の支援を受けたポルポト政権は、原始共産主義国家を目指し、農民以外の知識人を大量殺害してしまった。
その数は不明ながら、二百万人近いのではと言われ、知識人以外にも芸術家や芸能人の八割以上が殺された。
こんな無茶苦茶な政権だが、反米反ベトナムシアヌーク殿下と連合していたために、その後にポルポト派の大量虐殺を訴えられても、中国はポルポト政権を支持し、国際社会もベトナムの支援を受けたヘン・サムリン政権を認めず、大量虐殺も信じなかった。
そこでベトナムの支援を受けたフン・セン軍が、ポルポト派を首都プノンペンから追放したのだが、そこから更にカンボジアは内戦状態となる。
最終的にポルポト派が壊滅するまで内戦が続いたが、その後の政権側も内輪揉めの果てに現在のフン・センが全権力を掌握して、今日に至っている。
しかし長期政権の例にもれず、現政権も腐敗堕落しきっていて、全ての政策は賄賂で決定されている。
フン・センとその取り巻きだけが、違法な手段で個人資産を蓄財しているし、その背後でベトナムと中国がいて、実効支配を強めている。
 
以上はガイドからの受け売りだが、実はカンボジアでは、政治の話はタブーと聞いていた。
が、今回雇った三人のガイドは異口同音に、中国やベトナムの支援を受けた現政権の危うさと、日本やアメリカからの支援でそれを是正したいと力説していた。
無論、日本人相手のガイドだから、日本人に対してのお追従はあるだろう。
しかしガイドたちが見ず知らずの観光客を相手に、ある意味自分たちのリスクを冒してまで政権の腐敗を訴えているのは、カンボジア国民の中に、反政府、反フン・センの感情が高ぶっていることを示している。
しかし今現在のカンボジア国民には、自国の軍隊を掌握しているフン・センと、その背後にいる中国、ベトナムの軍事力に対抗する手段は持たず、その分悔しい思いに駆られ続けている。
実はこれは、世界中の独裁国家で起きた事と一緒だ。
しかし歴史の教えでは、独裁者がどんなに強権を以って国民を抑え込んでも、それはいつの日か打倒される。
カンボジアの現政権が腐敗しているのなら、どれだけ中国やベトナムが支援しても、いずれはカンボジア国民の手によって打倒される運命にある。
またポルポト政権がカンボジア国民にやった蛮行も、世界中の共産主義国家が仕出かした過去と一緒だ。
ポルポト派のやったことは、共産主義の必然だ。
共産主義がどんなに美辞麗句を重ね、理想を語っても、その実態は残虐さ、冷酷さ、そして一部エリートの腐敗につながることを暴露している。
 
カンボジアが中国、ベトナムの頸木から解放され、元の豊かな国力を取り戻してほしい。
心底そんな気持ちにされた、今回のカンボジア旅行だった。