僕の住む街には、「シニアクラブ」と称する老人会が存在するらしい。
そのシニアクラブから、「第二回バス旅行のご案内」のパンフレットが配られてきた。
日時 〇月〇日、午前8時半集合
目的地 近所の〇〇村
××第二工場
△△歴史民俗博物館
そして最後は、□□農協とれたて館でお買い物
会費 600円(飲食代別)
その他 参加者25名以下なら中止、49人以上なら高齢順
トイレが近い年寄りのために、「30分~40分ごとにトイレ休憩あり」と、重要な配慮がなされている。
「車椅子での参加もOK」とは、至れり尽くせりだ。
我が家の近所は、今を去ること50年ほど前に、大手不動産業者によって新たに開発された新興住宅地だ。
その当時は、それなりの人気地域だったらしい。
しかし今では、すっかり様子が違ってきている。
何よりも、第一期の入居者たちが、すっかり年を取ってしまった。
最早子供たちも巣立ち、この界隈に住んでいるのは、大半が年寄り連中だ。
最初に入居した住民たちが死亡した場合、続いて住む人がいないために、空き家になってしまうケースも多発している。
この年寄りたちは、年金支給が間に合った年代なので、食うだけなら困らない。
しかし最近では、年配者運転の事故が頻発しているので、車でアチコチに出かけるのは不安だ。
要は、暇はあるがヤルことがない連中だ。
暇潰しのためにだろう、歩いて行けるスーパーには、奥さんの荷物持ちの役目を果たす爺さんが、奥さんの後ろをついて回っている。
勿論僕もその一人で、最近では野菜や魚の相場観まで身についてきた。
そんな年寄りを救うのが、老人会の存在であり、今回のようなバス旅行が企画される。
第一回目のツアーは好評で、満員になったらしい。
僕なんかは、今更新しい人間関係作りなど面倒だし、とても参加する気にならない。
しかし、連れ合いに先立たれたりすれば、話し相手にも事欠く事態となる。
だから近所付き合いを密にして、年寄り同士が仲良くなりたい気持ちも、理解できないわけではない。
オレオレ詐欺に年寄りがひっかる理由の一つは、「話し相手が欲しかった」との動機があるとも聞く。
孤高を守るような強がりを言っていては、寂しい老後を生き延びることができないかもしれない。
袖振り合うも他生の縁。
近所に住んでいるだけでも、それは前世からの因縁かもしれないと思えば、人間関係を考え直す年代に来たとも思える。
初めてバスツアーに、参加してみようかな。