N国党が果たす役割の検証

お騒がせ政党、N国党と、その党首、立花孝志の主張を真面目に検証してみた。

 

立花孝志本人の話では、立花が「NHKをぶっ壊す!」運動を始めたのは、NHKの腐敗を内部告発したことに始まるらしい。

NHK内部に蔓延る、職員の不正を見るに見かねたので内部告発に踏み切ったが、その後、組織内でいじめられ、14年前に退社。

それ以降の立花孝志は、地方議員を経て、現在は参議院議員にまで成り上ったのだから、好き嫌いは別にして、凄い行動力なのは間違いない。

 

N国党の唯一の公約は、「NHKのスクランブル放送を実現する」だ。

そしてキャッチフレーズは、今や流行語となっている「NHKをぶっ壊す!」。

しかし僕には、この二つに関連が分からない。

スクランブル放送を実現するのに、何故NHKをぶっ壊す必要があるのか?

スクランブル放送が実現すれば、NHKはぶっ壊れるのか?

 

N国党も、知名度もだんだん上がってきて、それなりの軍師、参謀が付いたようだ。

立花孝志が最近、YouTubeに「NHKをぶっ壊すロードマップ」をアップした。

会社では、事業を起こす時、最初にこんなロードマップを作成し、進捗状況を管理するので、会社員だったら必ず一度は見た光景だ。

立花孝志にとって、自慢の力作のようで、

 ・第一段階 受信料不払いの時効期間を法律で確定する

 ・第二段階 ワンセグ受信料を無料にする(ワンセグでNHKを見る人は少ない)

 ・第三段階 衛星放送のスクランブル化

 ・第四段階 全放送のスクランブル化

で、全放送がスクランブル化されると、職員の給料が半減以下になるのでNHKはぶっ壊れると説明している。

ロードマップには必須の時間軸目標がないのは、N国党が手掛けた初めての代物なので、大目に見てこの際不問。

問題は最後の結論で、「スクランブル化→職員の給料半減→NHKがぶっ壊れる」の進行プロセスの意味が不明なので、もっと丁寧に説明してもらいたい。

 

立花孝志はYouTubeで、NHKが抱える問題点を

 ・NHKは、受信料として集めた金を、まるで無駄に使っている。

 ・NHKは実質的に電通に乗っ取られた

 ・NHKは、オリンピックやサッカーワールドカップ中継を不当に高値落札している

 ・NHKは、電通に多額の利益を生み出させている。

 ・80%の受信料支払い者が、不払い分20%まで負担するのは不公平

 ・NHKが集金人に暴力団を利用している

 ・集金人の取立てで、善良な老人、日本語が分からない外国人を震え上がらせている

と羅列し、NHKを強く批判している。

他にも紅白歌合戦のプロデューサーが、芸能事務所から多額の賄賂を貰い、私腹を肥やしているとも告発している、

これが事実なら、NHKは大問題組織だが、その問題の解決策はテーマごとに違う。

そして、これらの問題を個別に完全に解決していったら、何故NHKはぶっ壊れることになるのかが分からない。

 

NHK内部の不正、腐敗については、立花孝志の証言しかない、

立花孝志は、自分自身が不正に手を染めていたらしいし、更に不正を働いていた職員の実名を挙げている。

事実でなければ、名前を指摘された職員は名誉棄損で訴えるべきだと思うが、NHKは黙殺の構えのようだ。

また参議院選挙の政見放送で、立花孝志が連呼した、「不倫、路上、カーセックス」を仕出かしたNHKアナは、公然猥褻罪にでも問われない限り単なる社内風紀の乱れだ。

いずれも世間から眉を顰められる問題ではあるが、NHKが自主的に解決するべきモノで、N国党が「NHKをぶっ壊す」材料ではない。

実質的に、電通がNHKを乗っ取っていると言うのは、あくまで立花孝志の主観だ。

その所為で偏向番組が作られていると言っても、因果関係の証明はどこにもない。

またNHKの利益が電通キックバックされているのなら大問題だが、電通の報酬はビジネスへの正当な見返りならば、これも犯罪の要素はない。

 

何よりも唯一最大公約の、放送のスクランブル化と、立花が指摘したこれらの問題解決がどう関連してくるのかは、もっと分からない。

立花は、NHKの受信料がスクランブル化されれば、職員の給料が半減と言うが、例えば受信料が二割減れば、NHKはぶっ壊れるのか?

これもまた、全く分からない。

要は、立花孝志とN国党が掲げている「スクランブル放送化でNHKをぶっ壊す」のは、威勢は良いが夢物語の公約だとしか思えない。

 

僕は、N国党には反対の意見で、日本国民は国営放送を守るために、受信料を支払うべきと考えているが、仮にスクランブル放送が実現してもNHKはぶっ壊れないと思う。

受信料を払わなければ、NHKを見る権利がない。

いくら「NHKの番組はつまらない」と言っても、バカ番組ばかりしかない民放よりもまだマシだ。

要は、テレビを持っていて、NHKは絶対に見ない人がどれほどいるかだが、僕は、それは少数派だと思う。

視聴率をとれないマイナーな文化、スポーツも放送するNHKは、やはり貴重だ。

  

そうなると、N国党の存在意義って、一体何だろう。

N国党の登場で、若者が投票に出かけ投票率があがるのなら、それなりに意味がある。

N国党は、そんな新たな有権者をターゲットにして、党勢拡大を図っているはずだ。

但し、N国党に今集結している党員や地方議員、そして立花孝志自身の、NHKスクランブル放送が実現して以降の最終目的は一体何なのか?

せっかく政党構成要件を満たし、政党交付金支給の対象になったのに、それが「NHKをぶっ壊す」だけでは、早い段階で飽きられてしまう。

 

派手なパフォーマンスで評判のN国党だが、今のままでは、新自由クラブ新党日本、その他浮かんで消えた諸々の親党のような、一過性の徒花だ。

NHK集金人を追っ払ったり、有名者のストレス発散だけの役割では、国政政党の仕事としては、実に勿体ない。