昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

ブログの効用とリスク

僕は長らく、営業の仕事をしてきた。

顧客に会い、顧客を説得し、顧客に行動を起こさせることが業務だった。

その全てが、顧客と話し、顧客に納得して貰うことから始まる。

当然ながら、話題には注意した。

顧客が嫌がる話はタブーなので、政治ネタ、宗教ネタは要注意、プロ野球の贔屓球団すら、顧客の性格が分かるまでは遠慮した。

また個人的な事情があるかもしれないので、面談する相手については、事前に分かる限りの個人情報も集めた。

 

商談は約一時間で、四方山話を続けた後、お互いの主張は最後の最後に話し合う。

それまで相手を退屈させないよう、事前に話題を考え、話す順番までシミュレーションして商談に臨むのが常だった。

そして、その為に利用したのがブログだった。

ブログで、顧客との話題を予め文章にしておく。

すると起承転結や、あるいは論理の矛盾点が分かってくる。

仮に顧客から急に、政治ネタを振られても、用心しながら相槌を打つこともできる。

仕事の上でも、ブログは大変便利で有効なツールだった。

 

ただ一点、記事を掲載する時には、匿名であることに拘った。

ブログでは、自分の主張を赤裸々に書いていたからだ。

例えば僕は、ブログでは韓国嫌いを公表しているが、顧客の中には韓国人も多かった。

もしもこの顧客が僕のブログを読んだら、絶対に不快な思いになる。

 

いつもオチャラケ話に興じていたので、ブログをやっていると、特に興味を持った会社の後輩連中から、どうすれば読めるのかを教えて欲しいと頼まれた。

訪問者のヒット数を稼ぐためなら、どんどん紹介した方が手っ取り早い。

しかし、身近な人が僕のブログの存在を知れば知るほど、僕が日ごろ何をどう考えているのかも明らかになる。

また「君だけに」などと念を押しても、この手の話はアッという間に拡散する。

よって、会社でも知人間でも、誰にも明かさなかった。

 

実は、ブログを通じて知り合った人の中に、大変興味深い記事を書く人がいた。

僕は彼の記事がアップされることを楽しみにしていたが、ただ一つ、この人は自分の所属する会社や仕事の内容を、ほぼ無警戒に書き連ねていた。

記事を読むと、会社名、所属部署と彼のそれまでの経歴が分かるだけでなく、地元の市会議員選挙で特定候補の応援振りまで紹介されていた。

会社の上司の悪口も遠慮なしなので、読む分には面白いが、さすがに僕も「これはヤバイのでは」と懸念していた。

するとある日突然、ファン登録だけの限定公表になり、その後しばらくするとブログそのものをやめてしまった。

 

ブログは匿名だから大丈夫なわけでなく、事情を知る人に読まれると、不注意な一言から、ブログ主が特定される恐れがある。

だから僕は、注意深く極めて一般化した記事にしてきたので、幸いにして会社の誰にも分からないままだった。

尤もその分、地味で目立たないブログに終始する結果となったが。

会社を辞めた今では、誰に憚ることもないので、実名でも構わない。

しかし長らく続けた所為で習性となってしまい、今でも匿名記事を続けている。