こう見えても、僕は経済学部を卒業している。
学生時代は、経済的に恵まれていたわけではないので、「蛍の光、窓の雪」を利用してひたすら勉学に励む、模範的学生だった。
そんな苦労を重ねて身につけた経済学で、いつの日か世界に役立ちたいと思ってきた。
なんて、戯言を言ってみたいものだ。
実際の僕は典型的な不良学生で、在学中は麻雀に忙しく、勉強らしい勉強は全くしていないので、今でも当時を振り返ると、良くも卒業できたものだと冷や汗が出る。
何せ、学校の正門に到着するまでに多くの雀荘があり、悪友たちが窓から雀友が通るのを監視している。
連日、昼からほぼ徹夜で麻雀に明け暮れる毎日で、知的レベルは無残なほど低かった。
丁度この頃に、固定相場だった円レートの切り上げが大問題になった。
就職の面接試験で、試験官から「円はどこまで切り上げられるか?」の質問された僕の友人は「400円は固いと思います」と答え、試験会場を凍り付かせた。
どう言い訳しても勉強不足は隠せない、 僕たちはそんな超低レベルの学生だった。
だから今でも、経済の事を聞かれると答えに窮する。
もう少し、真面目に学問していれば良かったと思わないでもないが、過去を振り返ってもやり直しは利かない。
今は、一所懸命に産経新聞を読み、SNSで経済情報を入手している。
それでも、僕の就職活動の時期は、全くの売り手市場だったのが幸いだった。
どんなアンポンタン学生でも、「数は力」と勘違いして就職させてくれる企業ばかりで、僕のような不勉強の学生でも、四つの会社から内定を貰ったほどだ。
とにもかくにも就職先にありつき、可もなく不可もない会社員生活を送ったが、それでも40年以上も働くと、世間並みの生活の知恵は身につく。
一応は、後輩や若手から相談されたり、質問を受ける立場になり、それなりに気の利いたことをアドバイスしてきた積りだ。
ところが武漢肺炎は、今まで苦労して得た、多くの経験値を吹き飛ばしてしまった。
何とこの歳になって、経済が止まってしまう現実を突きつけられた。
武漢肺炎が、世界的レベルでここまでの災厄を引き起こすと、「真面目に努力」し、「必死の思いで身につけた」知識が、全く役に立たないのだ。
実際に、大手から中小企業、個人経営の店まで、全産業が真面な事業活動ができない。
日本で初めて非常事態宣言が発され、連日のように繰り返し「防疫のために三密を避けよう」と呼びかけられている。
「三密は悪だ、悪なのだ」と口を酸っぱくして言い含められるが、しかし実はこの三密こそ、経済活動の基本中の基本なのだ。
人は、移動し、集まり、働きかけることでビジネスを進めてきた。
それを全部やめようとするのだから、仕事がうまくいくはずがない。
しかもそれは、日本だけでなく、全世界の全産業に及んでいる。
人が動かなければ、経済は止まる。
しかし人が動けば、武漢肺炎の感染を止めることができない。
こんな事態は、どんな経済学の本にも書かれていない。
人によっては、大恐慌以上の災厄だとも言われる。
大恐慌は、第二次世界大戦の直接の原因にもなったほどの大事件だったので、それに匹敵すると言われる今回の武漢肺炎の質の悪さ、悪影響度の酷さ、大きさが分かる。
学究の徒からは程遠かった僕でも、今の異常事態と、その末恐ろしさは実感できる。
そもそも武漢肺炎の原因が分からないから、処方箋もなく、政権も含めて、誰もが試行錯誤を繰り返すが、どれが正解かは誰にも分からない。
但し、防疫か経済かを問われて、足して二で割るような、両論併記はあり得ない。
しかしいくら経済を優先しても、その所為で武漢肺炎がぶり返したら、元の木阿弥だ。
この窮地を乗り切るのは、何よりも先ず、武漢肺炎感染者の増加を防ぐことに尽きる。
今の日本は、非常事態下にある。
5月連休明けまでに解決などは到底考えられないし、いつまで続くかは分からない。
しかし、正解が分かっていないのなら、政府を信じて、何をさて置いても先ずは武漢閉演を抑え込むしかない。
世界中の国々で、政府は強権を以て、人の移動を禁止している。
日本でそこまでの強硬措置をとると、途端に大騒ぎになるが、だからこそ今は、日本人の自主的良心と精神性の高さが試されている。