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百田尚樹の無償出版

当代きっての人気作家、百田尚樹が、自粛疲れ国民への応援慈善活動の一環として、最新の自作小説を無償公開した。

作品のタイトルは「カエルの楽園2020」で、二年前発表の「カエルの楽園」の続編だ。

前作は、平和ボケした日本を、カエルの擬人化で皮肉ったものだった。

今回もカエルの擬人化は全く一緒で、一連の日本政府の武漢肺炎への対応に強い不満を持つ百田が、新たに今の世相を面白おかしく描いた。

小説を書くことが生業の百田が、作品をタダで公表するのだから慈善事業そのものだ。

 

また、その小説を発表したサイトは、「小説家になろう」コーナーだった。

ここは、小説家を目指す連中が自分の作品を発表する場所らしく、掲載した作品の人気投票コーナーもある。

百田はプロ中のプロ作家だから、当然ながら楽勝でトップになるはずだった。

 

発表前の百田のツイッターには、今の日本に強い危機感を持ち、自分の作品でその状況を打開したいとの意気込みと、自信溢れるツイートが連発されていた。

そして5月6日、満を持して発表された「カエルの楽園2020」だったが、掲載後すぐに百田自身によって一旦取り下げられた。

「あまり多くの人に読んで貰えなかった」ことが原因だと、百田自身が認めていた。

人気ランキングでも、最高七位止まりだったらしい。

要は、思いのほか不人気だったので、百田のヤル気が喪失してしまったようだ。

日本で一、二位を争う大人気作家だけに、プロでもない作家連中の後塵を拝したことで、作家としてのプライドを痛く傷つけられたことは、容易に想像できる。

カッコ良かった前言撤回になるので、百田もかなり悩んだ様子で、結果的には折衷案のような、9日、10日の土日限定で再掲載された。

 

読者数が伸びないことにイラつき、繰り返しツイッターで不満を表していた百田だが、大上段に構えて発表しただけに、引っ込みがつかず困っていたようだ。

  ・どうも評判が良くなくて、読んで貰えない

  ・我が子を店晒しにされているような気がする

と、「何故読者が増えないのか、こんなはずではなかった」感を吐露している。

百田にすれば、気合を入れて書いた作品が、思いの外受け入れなかったので、読者に悪態をつきたい気持ちがヒシヒシと伝わってくる所業だ。

 

実は百田って作家は商売熱心で、ツイッターでは商魂たくましさを垣間見せる。

「カエルの楽園2020」の無償掲載中止を決めた後も、「本として売り出すかも」とか「24時間でこのリツイートが1万人を超えたら考える」とか、読者の射幸心を煽る。

すると、熱心な百田信者から「待ち遠しい」などのお世辞ツイートが並ぶ。

直近では、二種類の終章を書いたらしく、「どの出版社が本にする勇気があるか?」と、如何にも面白そうだとファンの期待感を盛り上げている。

どうも、ファンの反応を見極めた上で、商売になるようなら出版に踏み切る計算高さを感じる。

いつも世間の注目を集めていたい、そんな自己顕示欲の強い作家と思われる。

 

肝心の作品「カエルの楽園2020」だが、発表直後は「面白かった」「さすがの百田作品で、グイグイ引き込まれた」「カエルの姿を借りて日本の問題点を暴き、痛烈に批判している」と好意的レビューが並んでいた。

タダだし、高評価レビューも多かったので、早速僕も読んでみた。

そして僕の感想は、「残念ながらこの作品は人気が出ない」だ。

 

先ず、この作品は二年前の「カエルの楽園」の焼き直しでしかない。

物語の基本構造は、前作と全く一緒だ。

新作の「カエルの楽園2020」では、最近の武漢肺炎への日本政府の対応や、論客たちの右往左往振りを、新登場のカエルのキャラとして皮肉たっぷりに描いている。

武漢肺炎は直近の災厄で、日本人の誰もが、代表的政治家の対応などを知っている。

「このカエルはあいつ」とか、「この組織はあの新聞」とかを当てる楽しみはある。

しかし、主人公や脇役として登場するカエルは、前作と同じ役割の擬人化なので、前作で死んでしまったカエルを再登場させるには、それなりの工夫が必要になる。

そこで百田は、前作のカエルが経験した状況とはちょっとだけ違う、「パラレルワールド」を設定した。

この時点で、既にかなりの無理筋となっている。

 

「カエルの楽園」は、日本が中国に占領される悲劇的なラストシーンがそれなりのインパクトを持っていた。

今回の「カエルの楽園2020」は百田本人が、「過去にないほどの、わずか二週間で書き上げた」作品だし、何せタダだ。

ストーリーの目新しさはないし、小説の完成度も高くはない。

それでも褒めているのは百田信者ばかりで、いくらタダとは言え、読者数として表される一般の読者の評価は容赦がなかった。

仮に百田が言うように、今後いくら改訂した上で文庫本として売り出しても、過去の百田作品のような注目を集めることはないだろう、

 

俗に、タダほど高いモノはないと言う。

今回の作品に関しては、「高くはないが、タダはやっぱりタダでしかない」に尽きる。