今回の米大統領選は、アメリカを分断したと言われるが、それだけではない。
日本の保守界隈も、深刻な分裂状況に追い込まれた。
ネットではいわゆる勝ち組、トランプが勝った論が圧倒的に主流だったが、その中でも個人差、温度差はあった。
最も過激なトランプ支持者は、百田尚樹と加藤清隆。
彼らは、1月6日に選挙人が確定した後も、最後は大統領令が発令され、トランプが逆転勝利すると大真面目にツイートしていた。
さすがにここまで頓珍漢な意見の「勝ち組」は、先の二人以外は、百田追随のYouTuber数人程度の少数に過ぎない。
だが「勝ち組」全員の共通項は「大統領選は不正選挙」との主張だ。
・大掛かりな不正選挙の結果、バイデンが勝った
・不正選挙を認めると民主主義を破壊される
・だからこの結果は受け入れられない
ところが「ではその不正を具体的に」と問われると、一気に「ネットでそう言っている」と、回答がアヤフヤになってくる。
よく言われたのは
・郵便投票で死人が投票した
・不在者投票で老人ホームの表をまとめてバイデンに投票した
・極めて不自然なバイデンジャンプ
・水道管破裂を理由に監視員が退室後に、民主党関係者が不正集計
・バイデン票を何度もカウントする様が監視ビデオに映っている
・未明に大量の中国製投票用紙が投票場に運び込まれるのを見た
・多くの人が宣誓供述書付きで不正選挙を告発した
とかのネット情報が根拠だった。
しかしこの程度では、選挙結果を逆転するようなインパクトはない
一番可能性があるのは、ドミニオン集計機による票の書換え疑惑だ。
パウエル弁護士は「トランプ票が予測を遥かに上回ったので、慌てた民主党がドミニオン集計機でトランプ票をバイデン票に書換えた」と主張し、百田はこの説が一番腑に落ちたと力説していた。
実際問題としてトランプが逆転するには、チマチマした不正を主張するのではなく、この「ドミニオン疑惑」を立証するしかない。
今回の投票集計機について、ドミニオンの評判は最悪だった。
ドミニオンの株主は曰くつき人物だとか中国企業だとか、そもそもドミニオン集計機はベネズエラ大統領選のために開発されたとか、如何にもドミニオンは胡散臭いとの情報が踊った。
挙句が、米軍がフランクフルトのドミニオン関連企業を急襲し、サーバーを押収したと伝えられ「ドミニオン=不正選挙」の構図が出来上がってしまった。
だから日本の「勝ち組」評論家の全員が、先ず「今回の大統領選挙では大規模な不正があった」との前提からスタートする。
ところが、この不正が全く立証されないのだ。
「未明にトラックで、大量の中国製投票用紙が運び込まれた」との情報は、いつの間にか消えてしまった。
「バイデン票を何度もカウントした」疑惑は、再集計の結果が同じだったことで説得力を失った。
証人が宣誓供述書にサインした涙ながらの証言も、裁判ではどれも証拠として認められなかった。
トランプ側は60件以上の裁判闘争に活路を求めたが連戦連敗で、勝ったのはわずかに1件だけ。
その他、証拠不十分で門前払いを食った案件も、多数ある。
百田は「裁判官が中国に買収された」と言い「裁判所が判断から逃げた」との妄言もあるが、アメリカでは信用されない。
やはり不正選挙は、ドミニオン集計機はシステム的に票の改竄が可能で、且つ何者かそれを実行したことを証明することに掛かっている。
ところがここに来て、意外な事実が判明してきた。
先ずドミニオン社が、トランプ側弁護士のパウエルとジュリアーニを名誉棄損で告訴した。
両者に13億ドルの賠償要求なので、いくら二人が金持ちでも、これが認められれば大変なことになる。
そして何と、ジュリアーニは「トランプ陣営は、不正詐欺とは言っていない」と言い出したらしい。
オイオイいくら裁判対策とは言え、ここまで不正選挙と引っ張っておきながら、不正とは言っていないとは梯子外しじゃないか。
いずれにしてもこの裁判で、ドミニオン集計機で不正があったのかどうかの白黒がはっきりする。
選挙結果が判明した後に、これほど事態がこじれたのは、偏にトランプが敗北を受け入れなかったことに起因する。
確かにトランプは、選挙前から郵便投票の危険性を主張していた。
ただここで「郵便投票をするな」と呼びかけたのは失敗だった。
今回の大統領選トランプ敗北の決定打が、郵便投票だったからだ。
様々な問題点は指摘されているが、郵便投票の結果で投票率が格段に上がったことは間違いない。
そのため次回の選挙では、郵便投票を止める方向にはならない。
投票率を上昇させる手段は、民主主義にとって正義だ。
今回苦杯をなめた共和党は、郵便投票の戦略を練り直すべきだ。
二か月半に亘って大騒ぎしてきたアメリカ大統領選は終わった。
上院、下院の多数派も民主党なので、トリプルブルー体制で、民主党政治がやりやすくなると見られている。
しかし最も心配されていたアメリカの対中国姿勢については、現時点までは急速な歩み寄りはない。
日本はバイデン政権とタイアップしていくのだが、そのアメリカが突然、中国との宥和策に舵を切る可能性は否定できない。
警戒を怠らず、やはり日本独自の国防体制成立が急務だ。
日本を守るのは日本で、アメリカではない。