50年前になる。
某地方都市で我々夫婦は結婚式を挙げた。
相手の嫁は、高校生の時から知ってはいたが、大学生、社会人時代は全く没交渉。
それがひょんなことから再会し,その後三か月もしないうちにプロポーズ。
そしてわずか四か月後には結婚式。
将に風林火山「疾き事風のごとし」のような、勢いに任せた結婚だった。
しかし縁は異なもの味なもの!
そんな慌ただしさにも拘わらず、その後の結婚生活は順調そのもの。
「別れる切れる」と騒ぐこともなく、周囲からは仲良し夫婦と看做されてきた。
全く平凡そのものの夫婦生活だったが、それでも50周年の金婚式となると感慨ひとしおになる。
そこで記念として、夫婦旅行を思い立った。
目的地は夫婦しての行きつけだった旅館に一泊、翌日にはその近所の名門ゴルフ場でプレイ。
そしてその後は宿泊場所を別のホテルに変更し、更にもう一泊。
そんな豪勢な計画だったが、肝心のゴルフ予定日の天気予報は大雨と最悪。
残念ながら二日目以降は全てキャンセルせざるを得なくなり、金婚式当日だけの一泊旅行となった。
しかし広大な部屋付き露天風呂で有名なその旅館は、かなり割高だし近所に大した名所旧跡があるわけでもないのに人気抜群。
通常は予約が大変難しいが、この日はゴールデンウィーク明けでしかも日曜日。
大半の客が家に帰る最後のチャンス日なので客も少ないようで、意外と簡単に予約ができた。
当日は午前7時に我が家を出発、途中の高速道路のサービスエリアで休憩を取りながら最初の目的地大内宿へ。
高速も一般道路もガラガラだったが、目的地直前で駐車場確保のための大渋滞に巻き込まれた。
そこで一番離れた臨時駐車場を利用し、徒歩五分ほどで大内宿に到着したのが正午頃。
すぐに最寄りの有名蕎麦屋、三澤屋で順番待ちの受付番号を確保したが、その時点でおよそ一時間待ち。
その間に二度目の大内宿を散策することにした。
大内宿は最近人気スポットだが、歩けば端っこまで五分程度の狭いエリアだ。
時間に余裕があるので、今回は急な階段の子安観音堂まで行ってみた。
頑張って登り切ったそこからの大内宿全景は、実にインスタ映えするものだった。
大内宿のほとんどを見終わり、三澤屋へ戻って注文した高遠蕎麦は1,320円。
薬味を兼ねた青ネギを箸代わりに蕎麦をすするのだが、しばらく食べると実に扱いにくい。
そこで割り箸で蕎麦を食べ、青ネギは薬味として直接むしゃぶりつく作戦に変更。
これは実に美味くて、一時間待った甲斐があった。
腹ごなしができたところで、一時間半掛けて本日の宿舎へ向かう。
実は前回コロナ大流行のために、この宿を直前でキャンセルせざるを得なかったのが五年前。
だから、全くの久し振りだ。
もう名前も忘れられているかと思ったが、さすがに客扱いはうまい。
いきなり仲居さんの満面の笑みで迎えられ、あっという間にお馴染みさんムードになった。
部屋に案内されたところで、すぐに露天風呂を満喫。
この日の運転疲れが吹っ飛ぶほど絶妙の湯加減で、30分ほど湯舟に浸った。
その後は部屋に備え付けのマッサージ器で、やはり30分間のモミモミサービス。
身も心もリフレッシュして、午後6時から夕食を食べる。
旅館の料理の特徴は、やたらと品数が多いこと。
ここも例外ではなく、各々は少量だがテーブル一杯に広がるほど種類が多い。
おかげで、あまりたくさんは食べていないのに腹一杯になる。
海外で和食のダイエット効果が注目されているが、この点が評価されているのだろう。
夕食後に二度目の露天風呂。
そして寝る前に三回目の温泉を満喫。
アァ素晴らしきかな、金婚式!
大満足の一日だった。