昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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野口みずきの挫折!

やっぱりと言うか、案の定、北京オリンピックで女子マラソン史上初の二連覇を期待された野口みずきが、出場辞退する事になってしまった。
事前のスイス高地トレーニングで痛めた左太もも肉離れの回復が思うに任せなかったようだ。
今回優勝でもすれば自らの商品価値が飛躍的に上がったと事を考えれば、本人が一番ショックを受けているだろうし、諦め切れない思いだろう。
しかしこれは全て調整失敗によるものであり、彼女を指導していたコーチも攻められるだろうが、全ては自己責任に帰する。
数週間前には、NHKで金メダルを目指して努力している野口選手の特集番組があった。
この頃は、誰もが彼女の金メダル獲得を信じて疑わなかった。
番組の構成もそのような雰囲気をかもし出していた。
しかし、それら全てがフイになってしまった。

彼女は爪に火を灯すような貧困生活から、文字通り足二本だけを武器に成功を収めた立志伝中の人物だ。
あの小柄な体のどこにあれだけのエネルギーを内在しているのかと思うばかりのストライド走法で、世界のトップランナーの地位を手に入れた。
その為、彼女の全身、所作振る舞いの全てが宣伝媒体となり、名声と富を手に入れた。
周囲からの期待感と本人の使命感から、それを維持する為には故障してしまうまで練習しなければならない程追い込まれていたのだろう。

オリンピック候補選手として、莫大な強化育成費をあてがわれ、あらゆる特典を受けながらトレーニングをしてきたはずなので、最後の最後までオリンピック出場に向けて努力したのだろうが、結果的には補欠選手の繰り上げも適わないタイミングでのリタイアとなってしまい、非難の声が上がるのもやむをえない。
前回のアテネオリンピック優勝の後サッサと引退していれば、日本陸上界の偉人として語り継がれただろうが、彼女は更なる可能性を求めて走り続ける道を選んだ。
この辺は、いつまでも現役に拘り今回のオリンピックに出場すら適わなかった高橋Qチャンと一緒で、凡人には理解できないアスリートの業なのだろう。

今回の問題では、かわいそうだとの同情も多く寄せられるだろうが、過去が輝かしいほど、光を失ったときの闇も深い。
巧成り名を遂げた人の挫折は、嫉みと好奇の目に晒されてしまう。
彼女の成しえた快挙が消え去るものではないのだが、今回の件で失った信頼や、本人の挫折感から、果たしてカムバックできるのだろうか。
年齢的に見て彼女の次のチャンスは多くはないが、それでも彼女は走るプロ選手なのだから、オリンピックの舞台に立てなかった失態を、ひたすら走り続ける事で払拭するしかないのだろう。
僕は、走る機械としてしか自己表現の機会がない彼女が気の毒な気がしている。

それにしても、不透明な代表選手選びの右代表だった谷亮子は銅メダルに終わったのに、同じようなプロセスの谷本歩実は金メダル。
明々白々な実績を残し文句なしに選ばれた野口みずきは直前の欠場と、オリンピックをめぐる人間模様は、想像の域を遥かに超えて面白い。