昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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小泉毅の兇刃が向かった先

厚生省の元次官や家族を殺傷した犯人、小泉毅について様々な論評がある。
あれだけの大事件を引き起こした男なので、次々と高校生の頃からの性癖なども明らかになっているが、意外にも昔は至って真面目な青年だったらしい。
しかし、最近では定職にもつかず、また隣人達へも迷惑をかけていたらしいので、「いずれは事件を起こしそう」な人物とも見られていたようだ。
ただ、今回の蛮行の動機が分からない。……らしい。
彼の供述は唯一点「愛犬チロが殺されたことへの復讐」であり、「その責任者への報復行為」なのだが、「そんな馬鹿な」が一般的な反応だ。

テレビコメンテーター達は、普段は何でも分かっているかのようなしたり顔の意見を垂れ流しているが、今回ばかりはあまりに突飛な論理を振りかざす小泉毅が理解不能のようで、「だから単独犯ではないのではない」と力説していた。
しかし小泉毅は、どうやら本当に犬のかたき討ちの為だけに34年間生きてきた男のようだ。
こんな男の行動を理解しようと努力しても無駄だ。
昔から世の中には、こんな訳の分からない人間が存在していたが、最近ではドンドン増えているような気がする。
それはそれで大問題なのだが、残念ながら解決の特効薬などありえない。
こんな輩がいる事を前提にした自己防衛しか方法はない。

ただ、この男の「愛犬を殺したのは高級官僚が悪いから」の論理は見逃せない。
マスコミやあらゆる評論家は、「官僚は悪」と常に主張してきた。
無論、官僚の中には堕落し私利私欲を肥やしてきたワルもいるだろうが、基本的にはそんな奴は少数派で、大半の官僚は身を粉にして不眠不休で国家繁栄に尽くしてきたはずだ。
しかし、天下りで退職金を二重取りするとか、税金の無駄遣いとか、とにかく江戸時代の悪代官そのままのイメージが定着している。
また我々も、給料が高いとか退職金の額が大きいと無条件に反発してしまう習性がある。
今回の小泉毅は、この考えを自分の妄想的独善性の中で更に先鋭化させ、ついには元高級官僚とその家族へと兇刃を向けてしまった。
マスコミは一斉にありもしない背後関係や、小泉毅が今まで生きてきた過程に犯行の動機を見出そうとしてきたが、自分達がまき散らした「官僚は悪人」説への反省はない。
如何にも社会正義の名を語ってステレオタイプの意見を押し付けていると、今回のような不幸な事件を再発させかねないし、何より官僚たちのやる気をなくしてしまう。
厚生省や社保庁の腐敗ぶりは許されるものではないが、今回の事件を年金テロと早とちりし勘違いしたマスコもまた、官僚がテロの標的になる素地の一翼を担っていた。

官僚の天下りも高価な退職金も我々には愉快な事ではないが、官僚への報酬に感情的に反発するだけでは実は何一つ解決できるものではない。