年をとるに従い、嗜好が変わっている。
食べ物は、脂っこい物は駄目。
若い頃好んだ血の滴るような肉や、ボリュームたっぷりの丼物はノーサンキュー。
食べ過ぎると、すぐに腹がやられる。
皿に空間が一杯の日本料理、麺類、サラサラのお茶漬けが有り難い。
聞く音楽も、変化が大きい。
突っ張っていた頃は、ヘビーロック大好き人間。
グランド・ファンク・レイルロードやレッド・ツェッペリンがお気に入り。
ブラスロックのシカゴに比べ、大して人気が出なかったが、一発屋のチェイスが一番好きだった。
ところが最近では、あの大音声が耳に障って、とても聞く気にならない。
一方、当時、軟弱音楽と思って大嫌いだった、カーペンターズ、ナット・キング・コール、ルイ・アームストロング等の素晴らしさに酔いしれる事が多くなり、認識を新たにしている。
どうも、「心が落ち着く」癒し系の方に、好みが変わってきたようだ。
ついでに言えば日本の女性歌手、竹内まりあや高橋真梨子もいいネェ。
フォークソングでも、さだまさしとかオフコースなんて、生涯聞く事はないと思っていたが、最近は鼻歌で口ずさんでいる。
アリスの「昴」をカラオケで歌いたいなんて、当時の仲が良かった友人達が聞いたら引っくり返るほどの変節漢振りだ。
食べ物も音楽も、人生そのものも、ギラギラした将来への期待や希望が少なくなり、今や枯淡の境地を目指している事は間違いない。
それにつれて、若者の行動の大半が、理解できなくなっている。
勢い、「最近の若いヤツは」と、文句を言う場面が増えてきた。
これは落ち着きか、はたまた退歩なのか。
容貌、体力だけでなく、考え方までが若さからかけ離れ始めたようだ。
人類史上、加齢とともに常に繰り返された事が、自分の身に降りかかってきたのだろうと、些か感傷的な寂しさを感じてしまう。
しかし女性へ好みだけは、楚々とした上品な女性は況やおや、ドギツイ系のケバい馬鹿オンナも嫌いではない。
唯一残った、年寄りのチャレンジ精神なのだろう。