昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

6・4天安門事件の日の中国

大連を訪問したのは6月4日。
1989年のこの日、中国では天安門事件が起きている。
今や遠い彼方の出来事で、中国人ガイドに聞いても、「学校で事件があったことは習った」と言うものの、詳細は知らないようだ。
あるいは、知っていても知らない振りをしているのかもしれない。

そしてこの日、日本ではワールドカップ予選の対オーストラリア戦があった。
熱烈な愛国的サッカーファンの当方、大連でカラオケに興じていても結果が気になって仕方がない。
顧客がスマホ経由で「引分けでワールドカップ予選通過」を確認し、それではホテルでニュースを見て喜びを分かち合おうとなった。

ところが、ホテルでは日本語放送をやっていない。
それどころか、CNNもない。
やっているのは中国国内放送ばかりで、見ても全く理解できない。
いわゆる反日映画(のよう)だったが、如何にも悪相の日本人将校が乱暴狼藉の限りを尽くしているのを、これまた如何にも美男で正義心の強そうな中国人若者が、歯噛みして我慢しているシーンが放送されていた。
しかし世の中の動向を把握できる国際的ニュース番組は、全く放送されていない。

僕は初めて宿泊したホテルだったので、こんなものと思っていたが、翌朝食事で一緒になった同行の氏達も、楽しみだったサッカーの結果を見られなかったことを怒っている。
「いつも日本語放送があるのに、何故か昨日はやっていない」と言うので、「天安門の日だから警戒したんじゃ」と冗談で冷やかしたら、「きっとそうだ」と断定する。
僕は、「いくら中国でも、さすがにそこまではやらないだろう」と思い、中国人ガイドに聞くと、ホテルに確認しに行った。
その結果は何と、当局から「一切の外国ニュースメディア番組は放送禁止」の通達があったらしい。
その場に居合わせた日本人同僚たちは、「これこそ中国共産党のやり方」と悲憤慷慨していた。
文句を言われたガイドは、「これは、上の方の問題なので、僕に言われても」と言い訳していたが、その彼でも言外に「このやり方は拙い」と認めている。
現代では中国でも、インターネットが急拡大しているので、こんな姑息な手段で情報統制しようとしても無理なのは、中国きってのエリート集団、中国共産党員も分かっているはずだが、それでも6月4日には外国の放送をシャットダウンして延命しようと画策する。
僕から見れば、断末魔の喘ぎとしか思えない。

しかし親日的土地柄と言われ、あの尖閣列島問題で反日デモに中国中が荒れ狂った時期にすら、一切のデモが発生しなかった大連の街中にも、「釣魚島は中国のもの」みたいな中国語ステッカーを張った車が走っている。
中国では、(彼らが「釣魚島」と呼んでいる)尖閣列島は、中国の領土と徹底的に教え込んでいる。
こんな中国で、中国共産党に都合の悪い情報発信を認めるはずがない。
13億とも、16億とも言われる中国の人口のうち、中国共産党の一方的な情報を信じ込んでいる人たちが半分でもいると、この国と仲良く出来るなんて、夢のまた夢だ。
ガイドは、「領土問題を解決するのは、結局は戦争しかない。今の中国は、ひょっとしたらそこまで進んでしまうリスクを持っている」と話す。

何度も訪日経験がある彼は、中国内部にも問題があることは充分に自覚している。
「沖縄まで中国のものと言ったのはちょっと拙かった」と苦笑いをしていたが、その彼が、もしも日本と中国が戦争にでもなったら、自分の生計を維持できないと、本気で心配している。
しかしそんな気持ちが少しでも周囲にばれると、どんな仕打ちを受けるか分からない。
そんな窮屈な国で、それでも金を稼ぎたいと必死の努力している。
中国では、「金が全て」と、割り切っているようだ。
共産主義なのにおかしい」と聞くと、「実は共産党幹部ほど金持ちなので、中国ほど共産主義からかけ離れた国はない」と自嘲する。

僕は、ガイドと天安門事件の議論が出来たことは、中国の変化の表れと認めるが、このガイドは中国人の中では数少ない、異国の文化に接触する機会が多い人物で、その分自国を客観的に見ることが出来ている。
しかし一般的中国人は、そんな暇も余裕もなく、ひたすら成り上がろうとギラギラとした目つきで日々の生活に追われている。
そして、一部とは言え経済的成功者を生まれ、それに続けとゴルフ場のキャディや、カラオケ店のオネエチャンまで、金儲けばかりを考えている。
それで全員が満足できればいいのだが、結果は格差がドンドン拡大している。
そんな不満を、数年に一度の反日暴動で発散させる。

そんな隣国、中国とどう付き合えばいいのか?
中国は、訪問するたびに急激な変化に驚き、それと同じくらい憂鬱な気分になってしまう。