昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

日頃の思いや鬱憤を吐露!無礼千万なコメントは削除。

イスラム国の残酷処刑から見えた事

ヨルダンのパイロットが、イスラム国に焼き殺された。
あまりにも卑劣な行為に全世界がショックを受け、イスラム国への憎悪が高まっている。

イスラム国の蛮行を認める気持ちはないが、しかし今回の処刑には、イスラム国なりの一貫した考えがあるように見える。
処刑を発表したビデオでは、ヨルダン人パイロットが、瓦礫の中を歩かされるシーンが映し出されていた。
その後、檻に入れられて、火を放たれた(らしいが、無論このシーンはカットされている)。
そして「パイロットは、空爆イスラム教徒を焼き殺したから」と、ナレーションが流れる。

確かにパイロットの処刑は残酷だが、空爆に反発する気持ちは分からないでもない。
チャップリンが喝破した「一人を殺せば犯罪だが、多くを殺せば英雄」だからだ。
空爆の場合、イスラム国の戦闘員以外にも、無辜の民が犠牲になる。
自分の家族、親戚が殺されると、更に憎悪が募り、その結果、敵に対して容赦ない仕打ちを加え、その結果またそれへの仕返しが……と,悪循環が続いて行く。

我々には、イスラム国が首切りや焼殺など、およそ現代社会ではありえない残虐な処刑方法を採用している事への驚きや恐怖感が強い。
しかしわずか200年前のフランスでは、ギロチンによる首切りは当たり前の処刑方法だったし、市民もまたその公開処刑に興奮し、歓喜していた。
イスラム国が目指す社会は、数百年前のイスラム帝国なのだから、我々の感性とはまるで違う倫理観に基づいて行動していると思われる。

また「目には目を」で有名なハンムラビ法典の考えも、現代社会では残酷な法律と考えられがちだが、本来は、過剰報復を禁止し、同価値処罰の原則を主張しているとの見方もある。
イスラムに詳しい学者たちは異口同音に、今回のパイロット処刑で、肉体が消滅する焼殺の刑に処したのは、イスラム圏では最大の侮辱だと説明していた。
僕は初めてそんな思想を知ったが、それならば、我々が焼殺に驚く以上に、イスラム教徒が空爆に強い反発を持つだろうことも、容易に想像できる。

アメリカを中心とする有志連合は、イスラム国壊滅を目指して空爆を続けている。
特に地上軍投入を躊躇うアメリカには、現状唯一効果を期待できるのは空爆しかないので、勢い、激しい空爆を展開せざるを得ない。
その結果、イスラム国が弱体化しているのも、間違いのない事実だ。
しかし例えイスラム国を壊滅に追い込むことが出来ても、イスラムの民衆に根付いた反アメリカ、反有志連合の気持ちが消える事はないだろう。

我々は、悪逆非道のイスラム国の懲らしめる、正義の有志連合との見方が一般的だが、逆の立場からみれば、キリスト教徒が仕掛けた十字軍に対する反発が数百年経っても消えないように、有志連合の空爆で身内を殺されたイスラム教徒の怨念も、深く蓄積されてしまう。

僕は、イスラム国が、あれだけのテロや戦闘を継続できる理由が分からなかった。
石油密売で資金力があるとか、アメリカの武器が流入しているとか、様々な憶測が流れているが、何よりも重要なのは、イスラム国に忠誠を誓う兵士の調達のはずだ。
相次ぐ戦闘で、最近はかなり減少していると言われているが、それでも未だに数万人の兵士を有しているとも見られている。
しかし、今回のヨルダン人パイロット、カサースベ中尉の焼殺刑は、逆に見ればイスラム国側の有志連合への憎しみの表れとも取れる。

イスラム国は、いずれ敗北し消滅するだろうが、形を変えた第二、第三のイスラム国が登場する可能性は極めて高い。
それは石油に全ての生活のベースを委ねておきながら、イスラム教に対しては無知な我々に対して、事態の深刻さを突き付けたものだ。