昔は平凡な企業戦士、今は辣腕頑固老人の日常!

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挨拶が奏でる世相

我が家の近くに、超三流(ではないかと思われる)大学がある。
この地に家を構えるまでそんな名前すら知らなかったほどなので、有名で人気がある学校からは程遠い。
因みにと、去年の入試問題にチャレンジしてみたが、50年近いブランクがあるにも拘らず、ソコソコ正解が分かった。
ひょっとしたらボケ始めた今でも、選択科目さえうまく選べば、この大学なら合格することが出来るかもしれないと、年寄りにも夢を持たせてくれる学校だ。
 
そんな訳で、偏差値も大したことはないだろうが、それでも毎年かなりの学生が入学しているので、我が家周辺への経済効果は大きい。
近所のラーメン屋には学割料金があるし、学生向けのアパートも多い。
行きつけの床屋も、夏休みなどの長期休暇で学生がいないと、暇そうにしている。
僕なんかは、学生なんかうるさいだけで邪魔なので、こんな大学は潰れてしまえばいいと思ったこともあったが、近所の商店街にとっては絶対なくてはならない存在だ。
 
またこの大学は、知名度と人気アップに手っ取り早い、スポーツに力を入れている。
きっと特待生として、有利な待遇を受けているのだろうが、、種目によってはそれなりに将来を嘱望されている学生もいるようだ。
校舎には、「祝○○君、関東大会優勝」とか、「祝××、シード権獲得」とかの垂れ幕が飾ってある。
その中の一つに、最近「祝、硬式野球部△△大会優勝」とが加わった。
 
この野球部とは、ほんのちょっとした因縁がある。
実は朝の散歩コースの途中に、この野球部の練習グラウンドがある。
そして野球部員たちが朝の7時前から集まって、何やら大声をあげながら練習している光景に出くわす。
こんなに早朝から気合を入れられては、周辺の住人はオチオチ寝ていられないのではと、余計な心配をしながら歩いていると、練習に合流しようとしている野球部員たちとすれ違う。
すると、この部員たちは全員、必ず帽子をとって「おはようございます!」と挨拶する。
全員が同じ行動をするので、野球部の指導方針が徹底されているのだろう。
 
こちらもまた帽子をとって、一礼しながら「おはようございます!」と答え返すが、これは気持ちいい。
たったこれだけで、この野球部を応援しようという気持ちになる。
だから垂れ幕で、この野球部がどこかの大会で優勝したのが、自分のことのようにうれしくなる。
また好きでも嫌いでもなかった、と言うよりも、どちらかと言えば嫌いに近かったこの大学に対しても、好感を持ち始めている。
運動部員から挨拶されただけでここまで変わってしまうのも、些か単純の誹りは免れないが、逆に見れば、挨拶にはそれだけの効果があるとも言える。
 
外国では、見ず知らずの他人同士でも、目が合うとニコッと微笑む。
エレベータの中でも、「Hi!」と声を掛け合う。
なかなか素晴らしい風習と思っていたら、実は連中は、見ず知らずの人間に対して、自分に敵意がないことを表す手段として、微笑んだり声をかけていると聞いて鼻白んだ。
逆に見れば、他人はそれだけ危険な存在なのだ。
日本の場合は向こう三軒両隣なので、すれ違う人は、たとえ赤の他人でも敵意を持っていないことが当たり前になっている。
たかが挨拶一つだが、日本人は恵まれた環境の中で生活していることを実感することが出来る。
日本社会はまさしく、「袖すり合うも多生の縁!」で成り立っている。