しかし会社としては、全く会社に貢献しない人間の面倒を、いつまでも見続ける積りはない。
猶予期間の二年間が過ぎた将に翌日から、「ハイ、それまでよ」となる。
僕の場合も、いよいよ今年で社保の期限が切れた。
途端に健康保険書が、プラスチックのカードからペラペラ紙のチャチなものに変わった。
何よりも一番の変化は、年に一度の健康診断だ。
会社生活の時は、命令されて否応なく検診させられた。
会社から見れば、万一若手社員が病気になると労働力に問題が出るし、それまでの投資が水泡に帰しかねない。
いい加減にくたばってきた年寄り社員の方は、あらゆる成人病予備軍であり、毎年チェックしておかないと治療費が莫大になる。
そんな訳で「社員の為に」とはあくまで建前、本音は「会社の為に」、毎年の定期健康診断を強制している。
ところが退職者となると、そんな気配りはまるで不要だ。
もはや木枯紋次郎の「アッシには関わりのないことでゴザンス」で、生きていようが死のうが、どうでも良いのだ。
現金なもので、自分で自分を守らざるを得なくなると、あれ程億劫だった健康診断も真面目に受けてみようと思う。
そんなタイミングで、国民健康保険から定期健康診断の連絡がきた。
早速病院に連絡すると、「予約なしで結構」と言う。
会社の場合は、三日ほど希望日を申告した上でやっと検診日が決まった。
だが、こちらは何とも大らかだ。
当日朝九時に出掛けると、直ぐに検診開始。
「〇〇さん、最初に体重、身長測定、続いて血圧を測ります」で、この間わずかに五分。
この後しばらく待つと、続いて検尿、血液採取だが、これも五分程度。
次に心電図測定を終わると、受付に呼び出されて「ハイ、これで終わりました」。
トータル30分で全て終了とは、実に簡単だ。
レントゲン撮影も腹部超音波検診もないし、今までなら最後に勿体ぶった医者の問診があったが、今回はそれもない。
止めは、「一週間で結果が出るので、その時にまた」と言うので、「連絡は?」と聞くと、「こちらからはしません」と愛想なしの返事が返ってきた。
マァこれも、自治体が親切心でやっているのだろうし、あまり期待はしていなかったが、それにしても何と事務的なことか。
稼ぎがなく、投資効果がない人間は、生きていくのが何とも肩身が狭い。