通常ならご祝儀もあり、期待感の方が高いと思うが、この辺にも型破りトランプ新大統領の面目躍如だ。
トランプは大統領選では常に不利と報道されていたが、もう一人の有力候補、ヒラリー・クリントンが、トランプに「劣るとも勝らない」不人気だったので、消去法みたいに勝ってしまった。
現に歴代のアメリカ大統領としては、就任時でも支持率40%と異例の低さだ。
大統領就任後にも露骨な反対デモが続くなど、トランプはアメリカ分断を象徴する大統領とみなされているし、アメリカの混迷は当分続くのだろう。
僕はトランプのようなキャラは、決して嫌いではない。
トランプは重要なツールとしてTwitterを利用していて、簡単な単語と短い文章でモノ申す姿勢が物議を醸している。
英語の勉強を兼ねて、話題になった彼のTwitterを読むために、自分でも始めて見たほどだ。
更に、自分を批判する意見には条件反射みたいに反論する攻撃的な性格から、大国アメリカの大統領としての資質を危惧されるもしている。
しかし平和とか改革とか、抽象的な表現で正義の味方然として万人に訴えようとする偽善的政治家よりも、敵と味方を峻別して、自己の利益を露骨に主張するトランプのやり方は、争点がはっきりして分かりやすい。
しかし、トランプの主張には、大きな矛盾点を孕んでいる。
彼が就任演説で述べた「Buy America, Hire America」や「Amrica First」がそれだ。
トランプは、アメリカから生産工場を海外に移動した企業をTwitterで威嚇することで、アメリカ国民の仕事を取り戻したと胸を張った。
しかし何故、企業はアメリカから諸外国に生産設備を移したのか?
それは実に単純なことで、アメリカの製造コストが、隣国や発展途上国に太刀打ちできなかったからだ。
それを強制的に、大統領権限を駆使してアメリカ国内に留めても、コスト競争力が改善されない限り、直ぐに元の木阿弥になる。
しかもトランプは、アメリカの高コスト体質の改善については、全くコメントしていない。
仮に一時的にアメリカの雇用が改善されても、そこで作った製品に競争力がない限り、アメリカ国内の需要で全てを消費することはできず、直ぐに在庫の山になる。
そうなると、海外市場にも販売せざるを得なくなるが、高いものはどこでも売れない。
そうすると、トランプの金看板、保護主義は途端に行き詰まる。
トランプが選挙中から繰り返してきた「アメリカの雇用」は、大統領が率先して旗振りするので一年間は維持できるだろうが、その先にあるのは「仕事はあっても製品が売れない」状況だ。
これは既にアメリカが経験済みの話で、アメリカはその解決策としてグローバリゼーションを打ち出していたはずだ。
言ってみればトランプ的手法は、時計の針を逆戻りさせているに過ぎない。
トランプ本人は、二期八年間は大統領職を続ける積りらしい。
トランプを熱狂的に支持したアメリカ人は、白人の低所得者層と言われている。
何十年か前の経済政策の焼き直しなのだが、この間仕事がなくなって不満が鬱積していた労働者階級は束の間の夢を見ることが出来た。
そんな連中に職の確保を約束すれば、人気を集めるのは想像に難くない。
しかしそんな理由で熱烈にトランプを支持した連中が、果たして四年後も同じ気持ちでいることが出来るのか。
就任直後の最初の大統領署名は、TPP離脱だった。
これもまたアメリカの雇用を守るのが謳い文句だが、物価が上がってしまうと効果は半減するし、せっかく職にありついても、企業の給料が上がらないと生活は苦しくなる。
私見だが、トランプ政権が発足してわずか数日ながら、むしろ今回のトランプ現象は長期に亘っては続かず、大統領任期は一期四年で終わると思うが…………..