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英語と日本語

「私は、それは正しくないと思います」を英訳すると、I think it’s not right.だと思うが、これはネイティブ連中には変な英語に聞こえるらしい。
正解は、I don’t think it’s right.
僕は長らく日本語を英訳する癖がついているので、どうしてもI think it’s not right.と言いそうになる。
 
この差についてある識者に、英語圏では肯定、否定を明確に意思表示するが、日本語は最後の最後まで持って回ると説明された。
成程、日本語は最後の「思います」なのか「思いません」なのかで、意味が180度違ってくる。
あるテレビ局の「家を買おう」との企画番組で、出演者が最後に「買いま~~」と引っ張った後、「せん」と言って翌週に続くのは、日本語だからできる構成だ。
 
しかし最近、実はもっと深い歴史と文化の違いがあることに気が付いた。
こんな言い回しの背景には、英語圏と日本語圏では、他人への心配りの方法に違いがあるのだ。
 
実は、言葉はコミュニケーションの手段だ。
であれば喧嘩でもない限り、言葉を交わすことで、相手に働きかけ、相手にその気になってもらい、相手に行動してもらうことが重要になる。
要はコミュニケーションを通じて、相手と良好な関係を作るために言葉があるのだ。
 
相手にその気になって貰う為には、相手の喜ぶことばかりを言えばいいが、実際には相手の話を否定せざるを得ない場面が必ずある。
その時に日本語圏は、相手の顔色を窺いながら、最後の最後まで肯定、否定を明らかにしない。
その瞬間をできるだけ遅くすることで、相手のショックを和らげることを考えている。
一見優柔不断と思われないでもないが、これが相手への思いやりで、忖度する日本の文化だ。
   
一方の英語圏の鉄則、原則は、先ず早い段階で否定し、最後を肯定で終わることにある。
そうすることで、話の相手に前向きな印象を与え、ポジティブな気分の会話になるらしい。
具体的に言うと、先ずI don’t thinkで否定して、次にIt’s right.と肯定する。
他にも、I'm not sure that your idea is acceptable.もある。
「貴方の考えは受け入れられないと思う」と否定的な表現だが、終わりはis acceptableと肯定形だ。
英語圏では、否定せざるを得ない場合でも、最後は肯定文で締めくくることが彼らのDNAだ。
 
僕はこの日本語の構成については、ネガティブな評価を聞いてきた。
合理的な英語の文法に比べ、日本語は結論が分かりにくいので、プレゼンテーションには不向きとも聞いた。
確かに、多くの人を相手にするプレゼンテーションには、先ずは結論ありきの英語が適していることは、英語初心者の僕にも分る。
しかし結論が遅いのは日本人の奥床しさだと思えば、別段卑下する必要などない。
 
何よりも日本語は、長年日本人の生活と一体化して進歩してきたのだから、日本人には一番心地よいはずだ。
グローバルだ、国際化だと言われて、英語が国際言語になった。
その英語圏で結論を急ぐのは、最後を肯定形で終わらないと、話し相手を不安にさせるからと言う。
向こう三軒両隣の日本と、常に近隣諸国と争い事を繰り返してきた欧米の差が、コミュニケーションツールとしての言語に現れている。
我々日本人は、結論が最後まで分からない日本語を、誇りに思ってよい。