テレビショッピングでは、アミノ酸が主成分の年寄り用の睡眠導入剤などが紹介されているので、睡眠不足に悩むのは僕だけではなさそうだ。
眠りが浅いだけではない。
睡眠途中で、度々目が覚めてしまう。
僕の場合、午後9時には自室に引き上げる。
そこから一時間、テレビを見ながら雑用に費やし、午後10時には計ったように眠りにつく。
ところが、どうしても午前2時から3時の間に、一度目を覚ます。
就寝前に飲む水の所為で、トイレに起きてしまうからだ。
水を飲まなければいいとの考えもあるが、それだと血が濃くなって脳梗塞の恐れがあると聞いた。
脳梗塞に罹るよりも、夜中にトイレに起きる方がはるかに良い。
そんな訳で、必ず水を飲んで就寝するようにしている。
しかし、夜中に一旦目を覚ますと、次にはもう眠れないのではとの恐怖感に襲われていた。
リタイアした直後は、「何としても寝なければ」と焦ったりもしていた。
しかし最近は「そのうちにまた眠るだろう」と横着に構えていると、いつの間にか眠っている。
ここから夏は午前5時、冬には午前7時まで眠るのが日課だ。
不眠の恐怖感から解放されたのには、理由がある。
昨年の夏以降、スマホにいびきラボをインストールして、自分のいびきを録音している。
それによって、自分が眠っていないはずの時間帯も、実は寝息やいびきをかきながら眠っていることが分かった。
眠りが浅いので、寝ながらもいろんなことを考えている。
その記憶がつながってしまって、いつも起きているような錯覚に陥っていたのだ。
そう言えば、もう50年以上も前のことだが、僕の母親が眠れない悩みを抱えていた(らしい)。
久しぶりに帰省すると、「夜には一睡もできない」と悩みを訴えてきた。
父親への不満や、家族とのストレスが重なり、眠れないと言うのだ。
それは大変と同情したが、夜になると母親は大いびきをかいて熟睡している(様に見える)。
翌朝そのことを母親に告げると、「とんでもない、昨晩もほとんど寝ていない」と力説する。
やはり最近の僕同様、アタマに浮かんでくる悩みや考えの記憶がつながってしまい、ずっと起きていたような気分になっていたようだ。
母親の場合、その後にストレスが軽減した途端に、不眠の悩みは消え失せた。
夜間に目が覚めた時の注意しなければいけないのは、テレビをつけたり、本を読んだりしないことだ。
眠れないからとテレビに見入ると、間違いなく目が覚めるが、明かりを消して暗闇で目をつぶっていると、ほとんど間を置かず再度眠ってしまう。
そんな経緯が、しっかりといびきラボに記録されている。
そんなことが分かってきたので、不眠の恐怖はかなり薄らいできた。
人間は、寝ないと死んでしまう。
数多の拷問の中で、眠らさない方法は、実は一番残酷なやり方とも聞いた。
人間は、自然と眠るようにできている。
年寄りは、不眠に悩む必要はない。