テレビの出演者、特に若い女性がゲストの場合、異口同音に発する台詞がある。
「ウワァ~ッ、スゴ~ォイ、信じられなァい!」
バカの一つ覚えの見本だが、これもまた一種のマインドコントロール手法だ。
実は大したことがない景色でも、テレビに映すとそれなりに迫力のある画面になる、
そこにアホタレントが「ウア~ッ」とか「キャ~ッ」とかの擬音を発することで、あたかも素晴らしい景色のように感じさせる、
こうなると、立派な詐欺の一種だ。
先般、妻の友人が詐欺メールに引っかかったことを紹介した。
友人を心配した妻が、わざわざ会いに行くと言うので、僕が聞いた限りの情報を整理し、今後の方針のアドバイスをA4一枚にまとめて手渡した。
友人を説得するのに、妻が聞き出した今までの出来事と、詐欺師の氏素性推定、更には友人の情報漏れ具合を時系列にまとめたものだ。
彼女は妻の説明を、半信半疑ならぬ二信八疑くらいで聞いていたらしいが、取り敢えずそのペーパーを持ち帰り、隣に住むオニイサンに相談してみたらしい。
「心配症の友達から、こんなモノ貰った」程度のノリだろうが、事情を聴いたオニイサンは、ビックリ仰天だ。
普通の感性なら、誰だって「これはヤバイ!」と思うはずなのに、詐欺メールに引っかかっている当事者の、この妹の危機感のなさは何だ!
慌てて翌朝、二人一緒で警察に駆け込んだらしい。
警察の見解は単純明快で、「これは典型的な詐欺なので、一切メールに対応しないこと」との、当たり前の指示だった。
未だ実害は出ていないので、警察は介入出来ないが、次に何か詐欺グループから動きがあれば、すぐに連絡するよう言われたらしい。
さすがにここまで来ると、彼女も自分が詐欺グループにマインドコントロールされていたことに気が付かざるを得ない。
帰宅後、彼女とオニイサンから妻あてに、丁寧なお礼の電話がかかってきた。
妻も、親友が間一髪で詐欺被害を回避できたことを喜んでいたが、詐欺グループも簡単には諦めないだろう。
当分は、身辺警護に配慮しておく必要がありそうだ。
詐欺グループにとっては、単に金を奪うだけなら、彼女が金持ちと判明した時点で暴力的手段を行使して強奪する方法もある。
しかしそれは、即刻犯罪となり、日本の優秀な警察がでてくれば、検挙されてしまう。
だから、被害者が自ら資金援助を申し出るように、メールで言葉巧みに誘導し、心を奪い取っていく。
そんな時に、一人住まいで、相談相手がいない金持ち老人は、格好のカモなのだ。
オニイサンも「妹は、この歳になって、何と情けない」と嘆いていた。
警察と言うオーソリティから断言されたことで、彼女も何とか夢から覚めたが、恐らくは友人の妻や、あるいはオニイサン程度からのアドバイスでは効果がなかったと思う。
それほど、詐欺師グループの攻め方は巧緻を極めていたし、彼女も詐欺グループを信用し、メールが着信することを心待ちにしていた。
マインドコントロールは、オウム真理教の教祖、麻原彰晃こと松本智津夫を神格化するために行使されたことで一躍有名になった。
しかし実は、ビジネスの社会でも、我々の周辺でごく普通に使われている。
例えば
・テレビ通販では、「先着200名様」とかで、危機感と競争心をあおり続ける。
・観光地ホテルのネット予約は、大半が「残り室数1」と少ない。
・数量限定や先高観を植え付けることで、客の購買意欲を刺激する。
・安売りショップでは、わざと乱雑な陳列で、値段が安いと思い込ませる。
・駐車場整備に金をかけないことで、商品が安いと錯覚させる。
・スーパーの精算は、客が必ず並ばせ「せっかく並ぶのなら」と衝動買いさせる。
・キャッシャー横にガムやチョコを置いて、最後の最後に買い物籠に入れさせる。
・ポイントカードを発行し、ポイント惜しさにリピート買いを誘導する。
これらは全部、買い物客の心理を研究して、衝動買いをやらせるテクニックだ。
この世には、そんなことばかり研究している機関や人物が、かなりの数存在している。
そう言えば、テレビ通販の世界は、売れなくなったタレントが最後に活躍する場所だ。
しかも通販ビジネスは、その大半が胡散臭い。
何かを持ちかけられたら、必ずその裏がある。
そう疑う程度の用心深さがないと、我々は簡単に騙されてしまう。