5月19日、愛知県知事リコール運動が、大きな節目を迎えた。
リコールの会田中孝博事務局長とその家族二人、事務局の職員で田中事務所の会計責任者の、合計四名が逮捕された。
とは言うものの不正署名の発覚以来、田中の逮捕は時間の問題だったので驚きはない。
田中も「不正には一切関わっていない」と御託を並べていたものの、身辺に迫りくる司直の手を恐れて逃げ回っていたホテルで逮捕された。
逮捕の瞬間まで、往生際が悪かった。
様々に不審な部分が残っているので、田中逮捕が全容解明につながれば良い。
中でも一番の関心は、高須克弥会長の関与についてだ。
高須は問題発覚以来一貫して「不正には一切無関係で、自分が一番今の状況を怒っている」と説明してきた。
ただTwitterでも会見でも、判で押したように、
・全責任は自分にある
・逃げも隠れもしない
・如何なる処罰を甘受する
と言い続けている。
それが田中逮捕を受けると、
・事態が進展して嬉しい
・捜査が進展することを期待している
と言いながら、田中については
・嘘をつく人ではない
・筋を通す人
・法的には悪いことをしても、彼なりに筋を通したのなら憎まない
と語る。
恐らくは、田中が不正を行ったのは「高須に恥をかかせるわけにはいかないから」と釈明していたことを受けてのことだろう。
自分は不正に一番怒っていると言いながら、田中が筋を通したのなら法的に問題があっても許すと言うのだ。
この一連の矛盾した発言は、いったい何を意味するのだろう。
高須の言い分を時系列で整理すると
・ボランティアが8月リコール活動開始直後から不正署名を指摘
・高須は彼らを裏切者扱いし、後にリコール用紙を盗んだと刑事告発
・個人情報保護のためリコール投票用紙を回収し溶解処分すると発表
・選管が83%超の不正署名を発表すると「不正ではなく無効票」と強弁
田中が逮捕されるまで、あるいは逮捕された後でも一貫して田中を信じる姿勢を貫く。
しかし事態を解明したいのなら、田中に対して会計報告さえ求めれば、リコールの会が出鱈目な運営だったと一目瞭然だったはずだ。
何が起きても「逃げも隠れもせずに全責任をとる」と大見えを切るが、具体的な疑惑解明の行動はやらない。
そんな高須だが、秘書が不正署名の押印作業をやっていたことが分かった。
将に高須の最側近が、言い訳が利かない不正作業のど真ん中にいたことになる。
それでも高須は「自分は無関係」と言い続ける。
秘書については
・不正押印は何百人もやっていた中の一人
・田中に要請され手悪いことをしてしまった
・「クビだ」と厳しく叱った
と言う。
もはや精神分裂状態ではないか。
そもそも高須が、秘書の不正を知ったのは何時なのか。
それを知った上で「叱った」程度で済まされるほど、不正押印は軽い違反なのか。
あたかも「大勢の中の一人だから大したことではない」みたいな言い草だが、何百人も不正押印に関わっていたのなら、それは大事件ではないか。
更に言えば高須はこの期に及んでも、Twitterに「(河村)市長から紹介されたのが田中事務局長、これがすべての発端」と書き込む。
全責任を負うと言いながら、微妙に責任転嫁をしているのだ。
僕は高須の、このような対応を見たくはなかった。
昨年11月にはアメリカ大統領選挙の結果を巡って、日本の保守派が二分された。
一方は、ありえない陰謀論に明け暮れ、結果として信用失墜し雲散霧消状態になった。
また彼らの一部は、愛知県知事リコール運動を支援もしていたが、不正が発覚すると沈黙してしまった。
影響力では、そのグループの筆頭格だった高須克弥は、言葉だけは勇ましいが、リコールの会会長としての責任を果たそうとしない。
昨年末からのこの二つの事件は、日本の保守派の脆弱さを露呈してしまった。
それが悲しい。