毎朝寒くて、布団から抜け出せない。
仕事に起き出すのも億劫だし、ホームコースに通う頻度が激減した。
前夜はゴルフに赴く積りのヤル気満々で、一応のクラブやウェアを準備しているのだが、朝6時の天気予報を見た途端、一気に戦意喪失してしまう。
連日、「天気は晴れ、気温は平年に比べ5℃ほど低く北風が強い」の予報なのだから、「何もそんな日にわざわざゴルフなんて」と思うようになっている。
昔なら、冬にどんなに寒くても、夏にどんなに暑くても、ゴルフをすることを厭わなかった。
これこそ、馬齢を重ねた結果、体力、気力が衰えてきた所為に違いない。
しかし、落胆したり、焦る必要などない。
「無理をせず、流れに任せて生きていく」のが当方の人生のモットーなのだから、老人になればなったなりの生き様が似合っている。
体力がなくなったのなら、暖かくなるまでゴルフはお預け。
ついでに言えば、顔の方も無理して若作りしても、年齢は若くはならない。
奇跡の90代と言われた森光子の最期は、見るに忍びなかった。
高倉健もまた、皆から「若い、若い」と囃し立てられるので、無理した若作りで顔がむくんでいる。
いしだあゆみに至っては、骸骨が洋服をまとっているだけの風貌に加え、声量も無くなり気息奄々のかすれ声で喋る。
なのに、未だにテレビに出演し、まさに老醜をさらしている。
そんな年寄り芸人たちが、何と多いことか。
皆、若いころからチヤホヤされてきたので、自分の現状を客観視できなくなっているのだろう。
その点社会からの注目度ゼロだった当方、たとえ頭脳も容姿も落ちぶれ果てても当たり前。
誰からも、憐れまれることがない。
お蔭でまるで好き勝手に、老いさらばえている。
更に日常の行動では、ボケてきたので他人様に多くの迷惑をかけているだろうが、そんなのカンケーないで、一切お構いなし。
それどころか、当たるを幸い噛みつきまわり、石原慎太郎バリの暴走老人ぶりを発揮している。
こんな嫌われ年寄りなのだが、しかし世の中は不思議なほどにバランスが取れてくる。
いつの間にか活動範囲が限定されてきたので、評判の悪さも住んでいる地域に限定される。
めったに会わない人の間では、昔の眉目秀麗、常識溢れる紳士然としたイメージが残っているはずだ。
間もなく仕事から足でも洗う日が来るが、そうなるとたいていの人の記憶からも消えていく。
颯爽とした若人の時代もあったのだから、落ち目の中高年の時代も受け入れないといけなが、そんな姿を見る人は少ないとは、何とラッキーなのだろう。
寒さに負けてゴルフに行かなくなったことを、「体力がなくなった」と悲観する必要は全くない。
それが自然の摂理と理解し、その気になったら、徐に悠然として出かけよう。
ひっそりとしめやかに生きる。
それこそ、時間だけはたっぷりある年寄りの特権だ。