近所にお気に入りの、ラーメン屋ができた。
実は今年1月早々、それまでの行きつけラーメン屋が廃業した。
この店は、いつもそれなりの行列ができていた、地元では知る人ぞ知る存在だった。
心の狭い当方は、それ以上長蛇の列になるのが嫌で、誰にも教えずこっそりと通い続けたラーメン屋だった。
変化が生じたのは昨年末。
姉と弟の二人で運営していた店だったが、お姉さんの方が休みがちになった。
聞くと、体調が悪いらしい。
それでも年末に、「来年また会いましょう」と挨拶を交わし、休み明けの1月6日に訪問すると、玄関に「都合により暫く休みます」の張り紙。
この時、悪い予感がした。
その後、暇に任せて電話をしても応答なしが続いた2月初旬。
いつも通りに呼び出し音が鳴り続け、今日もダメかと諦めた次の瞬間、店主が電話に出てきた。
当方すっかりうれしくなり「いつから再開ですか?」と聞くと「実は廃業を決めました」と大ショックな返事だった。
どうもお姉さんの体調が戻らず、弟さんが看病に専念するために店をやめることにしたらしい。
通いなれた店だったので、ガックリと脱力感に見舞われた。
ところが、捨てる神あらば拾う神あり。
この店が廃業する半年前、地元に煮干しラーメンの店がオープンした。
この店の評判が良い。
元々気になっていたし、失恋したような悲しさの中で、この店を訪問してみた。
すると、実に旨い。
その後は、すっかり大ファンになり、店側にとっても大のお得意さんになった。
今年の武漢肺炎対策で始めたテイクアウトは、今は券売機から消えたが、お得資産限定で密かに続いている。
今では、店に毎週通うほかに、そのテイクアウトもまた毎週欠かさず購入し、家族で味わっている。
そのラーメン屋のご主人に啓発され、当方も「門前の小僧」よろしくラーメンの武者修行を始めた。
先ずは道具からと、寸胴鍋、テボを入手し、スープ作りから始める。
スープの材料は、近所の肉屋で鳥ガラ1㎏、煮干し、エビの頭、リンゴ、玉ねぎ、にんじん。
それを寸胴鍋に投入し、灰汁を取りながら5時間煮込んで、スープ出来上がり。
叉焼は、肉屋で購入したものに、我が家で味付け。
メンマ、麺、カエシは、近所のスーパーで手当て。
これを我が家で、ラーメンとして作り上げる
今のところ、客は家族だけ。
しかし意外にも、嫁にも息子にも評判が良い。
何せ、スープからして本格派だし、叉焼にも工夫がこなされている。
このスープで、最近はやっている高級インスタントラーメンを調理しても、かなり旨いものが出来上がる。
そのうちに竹田恒泰みたいに、本格的ラーメン屋でも開業して見ようかと、すっかり野望が拡大している。
しかし、実はラーメン屋ほど、栄枯盛衰が激しい職業はない。
今日は大人気の店でも、持って数年。
わずか一年弱で、閉店に追い込まれる店も後を絶たない。
やはりトウシロウの身で、妙なスケベ心など持つとろくなことにならない。
ここはおとなしく、家族相手に職人気質の真似事を発揮しているに限る。
「オイラの作ったラーメンはどうデェ?」と、威張っているのがお似合いだ。